2016年4月4日、あの名探偵・明智小五郎でおなじみの小説「怪人二十面相」が、青空文庫にて公開されました。
(ニュース記事)
江戸川乱歩「怪人二十面相」、青空文庫で公開 (ITmediaニュース)
青空文庫で公開、ということは、誰でも無償で読むことができるようになったわけですが、なぜそれが可能になったのかと言えば、著作権法で保護される期間が終了したことによるものです。
このように、著作権での保護は永遠に続くものではなく、一定の期間が経過したら保護されなくなり、共有財産(パブリックドメイン)となります。
著作権で保護される期間
2018年12月30日以降、著作物の保護期間は、著作物を創作したときから始まり、著作者の死後70年を経過するまで続きます。
例えば、無名や匿名、変名(ペンネームなど)で公表されていて著作者の本名がわからない場合は、著作者がいつ亡くなったのかもわかりませんので、保護期間は公表後70年となります。
「怪人二十面相」の著作者は「江戸川乱歩」氏ですが、この江戸川乱歩はペンネーム、つまり変名です。
これで江戸川乱歩氏の本名がわからない場合は、保護期間終了は上記例外に従って公表後70年となるのですが、江戸川乱歩氏の本名はわかっており(平井 太郎氏)、亡くなった日も判明しておりますので、原則通り著作者の死後70年となります。
なお、死後70年といっても、その始まりは著作者が亡くなった日ではなく、亡くなった日の翌年1月1日が開始日となります。
江戸川乱歩氏は1965年7月28日に亡くなっておりますので、70年の起算点はこの日ではなく、翌年である1966年1月1日がスタートとなります。
ところで、この記事冒頭にあるように青空文庫での無償公開が開始された時点(2016年4月)では、著作権の保護期間は著作者の死後50年とされておりました。
つまり、江戸川乱歩氏の著作物の保護期間は、起算点である1966年1月1日から(当時の保護期間である)50年間の2015年12月31日までとなり、翌日2016年1月1日からは著作権法の保護が切れたパブリックドメインとなりました。
そのため、著作者からの許諾無しで作品を利用することができるようになり、今回のようにインターネット上で全文公開することが可能となりました。
なお、TPP11発効により著作権保護期間が延長されましたが、一度保護期間が経過したものについては保護は復活しませんし期間延長もされません。
江戸川乱歩氏の著作権は、TPP11発効(2018年12月30日)を向かえる前である2016年1月1日時点で保護期間が終了しているため、TPP11の影響を受けずに2016年1月1日以降ずっとパブリックドメインです。
今後は保護期間が変わる
【ご注意】2018年12月30日より著作権法が改正されて、上記のとおり著作権の保護期間が70年に延長されています。以下の記事は、2016年4月の公開時のまま残しています。
このように、現在は著作者の死後50年間は著作権法で保護されることになっていますが、今後、この保護期間が変わろうとしています。
それが、もうすでに多くの方がご存じだと思いますが、環太平洋戦略的経済連携協定、略してTPPへの合意です。
このTPPへの合意を受けて、すでに改正著作権法の法案が提示されており、
- 第51条(保護期間の原則)
- 第52条(無名又は変名の著作物の保護期間)
- 第53条(団体名義の著作物の保護期間)
- 第57条(保護期間の計算方法)
- 第101条(実演、レコード、放送又は有線放送の保護期間)
以上の各条にて「五十年」だった箇所が「七十年」へと変更されるものとなっています。
国会での審議・批准を経て、TPPが日本国において効力を生ずる日に施行されることになっており、近いうち(今年?来年?)には改正法が施行されることになります。
保護期間延長の是非は?!
このように、近い将来、著作物の保護期間が現在より20年延長される状況となっていますが、その延長に対しては反対意見も多く聞かれます。
保護期間の延長は、良かったのか、悪かったのか。
今回の改正が、著作権法第1条で謳われている
文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること
”文化の発展に寄与”するか否か、注意深く見守っていきたいですね。