著作権こそ契約が重要

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イラストや音楽、小説などは、制作を依頼する際の契約において

著作権というものが関係するかもしれない・・・

と考える方が多いかと思いますが、意外と重視されていないのがホームページ制作。
ホームページを構成する要素には著作物が多数含まれることが多いため、著作権についてしっかりと協議し、契約書に明記しておく必要があります。
ホームページの作成に限らず、冒頭に挙げたイラストや音楽、小説などの他、映像作品や写真、漫画、振り付け、プログラムなどでも、制作を依頼する場合は契約書を交わし、著作権についての条項を入れておくことが重要です。

では、なぜ重要なのかいうと、著作権法により次の3点が定められているためです。

その1: 著作権は著作者に与えられるもの

次のような誤解をされている方はいらっしゃいませんか?

・制作を依頼したのだから、著作権はうちのものだ!
・お金を払ったのはこっちだから、当然著作権もこっちが持っている!
・プロではない素人が書いた絵をタダでホームページに載せただけだから、著作権は関係ない!
・所有権移転の契約書を交わしているから、著作権についての問題は無い!

実はこれらはすべて誤りです。

著作権を保有するのは、原則として著作物を作った著作者です。
制作を依頼した側でもありませんし、お金を払った側でもありませんし、プロか素人かは関係ありません

また、所有権と著作権は別のものですので、所有権が移ったからといって当然に著作権も移るものではありません

※所有権は物(有体物)に対する権利、著作権は形のない観念(無体物)に対する権利で、まったく別の権利です

Note: 適法に所有権が移った(譲渡された)場合、著作者の譲渡権は及ばなくなります(著作権法26条の2)。例えば、Aさん(=著作者)が描いた絵画XをBさん が購入(=所有者)した場合、Aさんの譲渡権は絵画Xには及びませんので、Bさんはその絵画Xを他人に売ることができます。また、絵画のような美術の著作 物あるいは写真の著作物に限り著作者の展示権が及ばず、所有者は許諾無くその絵画や写真を展示することができます(著作権法45条)。

その2: そもそも著作者人格権は譲渡できない

著作者に与えられる権利に「著作者人格権」というものがあります。
氏名表示権、公表権、同一性保持権の3つをまとめたものですが、実はこの権利は他人に譲渡できません(著作権法59条)。

そのため、たとえ契約書で著作権を譲渡する旨を取り決めたとしても、この著作者人格権は著作者が持ったままですので、例えば雑誌に掲載するために写真を少しトリミングする、といった行為は同一性保持権の侵害と言われてしまう可能性があります。

でもトリミングできないと掲載するときに困りますので、実務上一般的には「著作者人格権の不行使特約」を契約書に明記します。
譲渡はしない(できない)けど、その権利を行使しないことを約束する、ということになります。

その3: 単に「すべての著作権を譲渡」ではダメな場合がある

著作権は、その全部または一部を譲渡することができます(著作権法61条)。
一部とは、例えば展示権だけ譲渡し、他の権利は譲渡しないということが可能です。

しかし、だからといって契約書に”著作権すべてを譲渡する”と書いておけばOKかというと、実は留意点があります。

単に「すべての著作権を譲渡する」といった内容の契約書では、翻訳権や翻案権など(著作権法27条)と二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(同法28条)は譲渡されません。

これは著作権法61条2項で規定されており、先ほど挙げた同法27条と28条については譲渡の目的として特掲されていない場合は譲渡した者に留保されたものと推定される、つまり譲渡されていないと扱われます。

例えば作曲の場合、27条の翻案権が譲渡されていないと編曲するにも許諾が必要ですし、編曲できた場合でも、その編曲により作られた音楽は二次的著作物ですので、28条により元々の曲を作った人の著作権も及ぶことになり、例えば複製権を理由に販売しちゃダメと言われる可能性があります。
それでは編曲したバージョンの販売を考えていた場合に困りますよね。

そのため、すべての著作権を譲渡するという契約の場合は、著作権法27条と28条の権利も譲渡するとしっかり明記する必要があります。.

まとめ: だから、契約が大切です

以上のように、著作物が関係する契約においては、著作権についての条項を取り決めておくことが大切になります。
無用なトラブルを防止するためにも、しっかりと著作権についても留意した契約書を作成することが重要ですので、専門家に相談して正しい契約書を作成しましょう。

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