著作物を無断で使用できる場合(1)

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著作物を利用する際は、パブリックドメインなど著作権が消滅・放棄されたものでなければ、原則として権利者からの許諾が必要となります。

ただ、どんな場合においても許諾が必要となると、その手続きが煩雑となることから著作物の利用が促進されず、また権利者にとっても非常に大きな負担となってしまいます。

そのため、著作権法では「権利制限規定」(または「制限規定」)と呼ばれるいくつかの例外を設け、権利者からの許諾が無くても著作物を利用できることとしています。

権利者は「使っちゃだめ!」と言うことができる権利がありますが、その権利を制限するため”権利制限規定”と呼ばれます。権利者側を制限するわけですね。

【権利制限規定】(1)(2)

私的使用のための複製など

最も多くの方に関係するのが、この規定ではないでしょうか。
著作権法第30条で規定されているもので、個人的または家庭内など限られた範囲で使用する場合は権利者からの許諾不要というものです。
この規定により、音楽CDをiPodにダビングして聴いたり、テレビ放送を録画しておいて後日家族で見る、といったことが無断で行うことができます。
こういったことは、もうすでに多くの方が当たり前のようにやっていますよね。

ただし、この規定で無断で複製できるためにはいくつかの条件があります。

  • 個人、家庭内、またはこれに準ずる範囲内であること
  • 仕事以外の目的であること
  • 使用する本人が複製(コピー)すること
  • コピーガードを解除する、または解除されていることを知っていながらコピーするものではないこと
  • 著作権を侵害したインターネット配信(違法配信)であることを知りながら音楽や映像を(*1)ダウンロードするものではないこと
  • 誰でも自由に利用できるダビング機械などを利用しないこと
  • 映画の盗撮ではないこと

上記条件を1つでも満たさない場合は、この制限規定は適用されず、利用する際には権利者の許諾が必要となります。

なお、この規定によって権利制限されるのは「複製」および「翻訳、編曲、変形または翻案」(著作権法第43条)となります。

*1: 2021年1月1日施行の改正法により、音楽や映像に限らずすべての著作物が対象となりました

引用

他人の著作物を自分の著作物において引用する場合の規定です。(著作権法第32条第1項)
ブログやウェブサイト、書籍などにおいて、他の著作物を引用する必要がでてくる場合は少なくないと思いますが、その際は以下の条件を満たせば権利者の許諾無く利用することができます。

  • すでに公表されている著作物であること
  • 公正な慣行に合致すること
  • 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であること
  • 出所を明示すること(※コピー以外での引用の場合はその慣行があるとき)

法律上は上記条件なのですが、「写真パロディ事件」などの裁判例により、上記に加えて次の条件も必要だとされていますので注意が必要です。

  • 引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること
  • 引用部分が明確であること(カギ括弧などで区別する)
  • 引用を行う必然性があること

なお、英語の原文を日本語にするなど翻訳して引用することも可能(著作権法第43条)ですが、その際は引用元の出所を明示しなければなりません(著作権法第48条)。

引用は、先述の翻訳を除き、他人の著作物をそのまま改変せずに利用することが原則です。
そのため、引用において要約したり自分の言葉で改変、翻案して無断利用することは認められていませんので要注意です。

写り込み

これは平成24年の法改正で追加された比較的新しい制限規定で、正確には「付随対象著作物の利用」となります(著作権法第30条の2)。

例えば街中で友だちの写真を撮った場合に、その背景に偶然絵画が描かれたバスが写っていたような場合、あるいは街中で動画撮影していたら横を走って行く車から流れていた音楽も一緒に録画されてしまったような場合。
法改正以前では、こういった場合において写真や動画に映り込んだ絵画や音楽は、厳密には著作物の複製であるため、その写真や動画を私的以外に利用する場合は著作権者の許諾が必要となっていました。

しかし、これではあまりにも不便であるため、以下に該当する場合は権利者に無断で利用できることになりました。

  • 写真や動画などの撮影によって(*2)複製または翻案されたものであること
  • 本来の撮影対象のものから分離することが困難であるため付随してしまった著作物であること(*2)
  • その付随した著作物の種類や用途から判断して著作権者の利益を不当に害しないこと
*2: 2020年10月1日施行の改正法により、
・”写真や動画などの撮影”に限定されず、その他の複製行為と伝達行為も該当するようになりました
・分離することが困難ではなくても該当するようになりました。ただしあくまで付随的な利用に限られる点は変わりません

先ほどの事例では、写ってしまったバスも録音されてしまったカーオーディオも、それを撮影・録音しようとしたものではなく、また撮影時において取り除くことが困難であるため、上記の各条件に合致したものであり、権利者の許諾無く利用することができます。

逆に言うと、その著作物自体を撮ろうとしたり、分離することが容易である場合には、この制限規定は適用されません。
テーマパークでその中のキャラクターと一緒に写真を撮るような場合は、そのキャラクター「も」一緒に撮影しようとしているわけですし、また分離することも容易(そのキャラクターに近づかなければよい)ですので、私的以外に利用する場合においてこの制限規定を主張することは難しいと考えられます。

なお、この制限規定により複製・翻案された(写り込んだ)著作物は、複製・翻案が許可されるだけでなく、それが写っている写真や動画などの著作物の利用に伴って利用すること(ブログやサイトに掲載する、など)ができます(著作権法第30条の2第2項)。

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