著作者の権利(1):著作者人格権

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私のココロを傷つけないで!という権利

著作者が有する権利は大きく分けて2つありますが、その1つがこの「著作者人格権」です。
著作者人格権とは、著作者が精神的に傷つけられないようにするための権利で、最大の特徴と言えるのが、著作権と違い他人に譲渡(相続も含む)できないことです。
著作物が創作された時点で自動的に著作者に付与され、著作者が生存する限り(法人の場合は解散するまで)ずっと保有しています。

なお、著作者が死亡した場合(法人が解散した場合)は著作者人格権も消滅することにはなりますが、消滅したから何をやっても良いということではなく、原則として(※)著作者人格権の侵害となるような行為は行ってはならないこととされています。

※行為の性質や程度、社会情勢により、著作者の意を害しないと認められる場合を除く。

著作者人格権には、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」の3つがあります。

公表権

まだ公表されていない自分の著作物(または同意を得ないで公表された著作物)について、公表するかしないか、また公表する場合はその時期や方法を決めることができる権利で、意に反して無断で公表されないための権利です。
アートな作品ならぜひ公表したいと思いますが、昔に描いた恥ずかしいイラストや手紙は公表したくない、、、という場合、この公表権を行使し、公表されることを拒むことができます。

ただし、未公表の著作物の著作権(財産権としての著作権)を譲渡したり、「美術の著作物の原作品」(=絵画や彫刻、マンガなどの作品そのもの)または「写真の著作物で未公表の原作品」(=未公表の写真原本)を譲渡した場合は、著作物の公表に同意したものと推定されます。

若気の至りで描いたはずかしい絵画のため公表していなかったものでも、それが描かれた紙を本人同意の上で他人に譲ったのであれば、その譲り受けた人によって公表されるかもしれません。

氏名表示権

著作物を公表する際に、著作者名を表示するかしないか、また表示する場合はどのような名前(本名なのかペンネームなのか)で表示するのかを決めることができる権利です。

例えばユーミンこと松任谷由実さんの曲の場合、「荒井由実」と「松任谷由実」という名義を使い分けていますよね。

このように、原則としては著作者自身で公表時の著作者名表示を決めることができるのですが、その著作物の利用目的や態様に照らして著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略できるとされています。
よって、例えばスーパーの店内で流れるBGMなどは、わざわざ作曲者名をアナウンスしたりはしません。

同一性保持権

著作者人格権の中でも特に重要な権利で、意に反して著作物の内容やタイトルの改変(変更や削除など)を禁止することができる権利です。
有名なところでは、ある歌の歌詞に作詞者に無断で台詞が追加されたとして、著作者である作詞者が同一性保持権の侵害を訴えた事件があります。

通常のビジネスにおいても、例えばイラストレーターが納品したイラストは右向きの人物だったものを、発注した会社側が独断で左向きに変えた(左右反転させた)ような場合、それをイラストレーターが不服だと思えば同一性保持権の侵害となる恐れがあります。

そのようなリスクを回避するため、ビジネスにおいては著作者人格権の行使をしない旨(著作者人格権不行使特約)を契約書に明記する場合が多いです。

ただし、著作物の性質やその利用の目的・態様に照らしてやむを得ないと認められる場合は適用されません。
小学生低学年向けに文章の漢字の一部をひらがなに変更する、歌手が下手すぎて正しいメロディーで歌えない、といった場合が該当します。

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