ビジネスにおける著作権というと、”自分の会社には関係ない”と考えている方も多いのでは無いでしょうか?
”著作”という言葉のイメージから、著作権といえばイラストや音楽、動画といったコンテンツに関するものであり、以前お話しを伺った運送業を営んでいる社長も「当社には縁が無い分野だ」と仰っていたことがあります。
しかし、実際にはどんな業種であっても、著作物の「利用」と「作成」に関わってくることは多いのです。
そして、その著作物の利用と作成には、「契約」というプロセスも重要なものとなります。
そんな、ビジネスに関連する著作権と契約について、少し考えてみます。
身近にある著作物
コンテンツ系の業種ではなくても、例えば運送業を営む会社であっても、著作物を扱うことはあります。
多くの会社に関係するものとしては、やはり「ホームページ」が挙げられます。
イラストや写真はもちろん、ホームページに掲載している文章も、多くの場合著作物です。
また、会社案内やチラシなども、それ自体が著作物であったり、あるいはイラストや写真などの著作物を利用しているものになります。
飲食業であれば料理などの写真を撮影することは多いでしょうし、イベント業であれば音楽やダンスのイベントに関係することもあると思います。
また、業種を問わず、デスクワークであればWordやExcel、PowerPointといったソフトウェアは必ずと言って良いほど利用していると思います。
これらのソフトウェアも著作物であり、Microsoft等のメーカーが定めた利用規約に則って利用することができます。
著作物の利用と作成
このように、どのような業種であっても様々な形で著作物に関わることになりますが、その関わり方については、大きく分けて2種類あります。
著作物の利用
多くの会社にとって関係が深いのは、この「利用」だと思います。
他社が権利を有する著作物を利用するためには、原則的に著作権者から利用の許諾を得ることになります。
著作権法という法律により、複製(コピー)や上演、演奏といった利用ができる権利は著作権者が専有していますから、著作権者以外の者が利用する場合は、その権利者からの承諾が必要となります。
よって、原則的には勝手に利用せず、必ず権利者に確認し承諾を得るようにしましょう。
ただし例外もあります。
- 著作権法で定める「権利制限規定」に該当する場合(※詳しくはこちら)
- 権利者が予め利用を許諾している場合(※利用条件が設けられている場合もあります)
これらに該当する場合は、定められている利用条件に従うことで、権利者から個別の許諾を得なくても著作物を利用できます。
著作権利者が予め利用を許諾している場合としては、多くのソフトウェアに採用されている GPL(GNU General Public License)などのオープンソースソフトウェア(OSS)ライセンスや、このブログでも採用しているCreative Commons(クリエイティブ・コモンズ)などのライセンスが有名です。
なお、ここで挙げた2つのライセンスには利用条件が指定されていますので、利用する際はこの条件に従う必要がある点には要注意です。
逆に言えば、GPLを守っていない場合は著作権者からの許諾が得られていない状態となりますので、プログラムの無許諾利用となり、複製権や公衆送信権、翻案権などの侵害と判断される場合が考えられます。
著作物の作成
日々のビジネスにおいては、写真を撮影したり、イラストを描いたり、音楽を作ったり、文章を書いたりと、著作物を作成に関係する場合も少なくありません。
※職務著作:就業規則で規定がある場合を除き、会社等の発意(指示)により、その会社等の従業員が業務として創作し、会社等の名義で発表される著作物は、その会社等が著作者となる。
そうして創られた著作物には、著作権者として様々な権利を有することになります。
その場合、自社で利用するだけでなく他社へ提供する場合もありますし、また権利侵害がある場合には権利者としての対応が要求される場合もでてきます。
また、自社で創作するだけではなく、外注先などの会社やフリーランスなどに著作物を作ってもらう、ということもあります。
面倒でもしっかりと契約手続きを
このように、著作物を利用する場合でも、創作する場合でも、忘れてはならないのが「契約」です。
1対1で契約書を交わすことももちろんですが、先に挙げたGPLなどのライセンス(利用許諾)も、権利者との間で交わすある種の契約です。
契約手続きと、その内容を記した契約書によって、他者が権利を有する著作物を利用する場合は、その許諾を得ていることの証拠となりますし、外注先に作成を委託する場合(業務委託)でも、その内容や権利の帰属について明確になります。
逆に、契約書がない場合は、これらの点が曖昧となり、見解の相違を解決するために業務が遅延したり、最悪の場合、訴訟に発展する危険もあります。
また、契約の内容についても十分留意が必要です。
例えば、自社ホームページや製品パンフレットに掲載するために製品写真の撮影を外部のカメラマンに頼んだような場合、しっかりと業務委託契約を締結し、写真の著作権を譲渡する(あるいは自由に利用できるようにする)契約にしておかないと、カメラマンが著作権者のままとなりますので、撮影した写真の使用に支障が出る可能性があります。
※契約の内容は当事者間で決めることになりますので、一概にこのようにすべきというものではありません。
著作物の利用契約であっても、具体的にどのような利用が可能なのか、どの権利について許諾を受けているのかを明確にしておかないと、後日トラブルの元になってしまいます。
時間が無い、あるいは面倒だということで、契約書の取り交わしまでできないような場合でも、きっちりとした契約書の形でなくても大丈夫ですので、覚書でも、あるいは受発注書の備考欄に書いておくなど、何らかの記録と証拠を残しておくだけでも、後日役に立つことがあるはずです。
正しく契約をし、正しく著作物を取り扱うように気をつけたいですね。