著作権法令和5年改正の概要を知ろう

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現在の著作権法は昭和45年(1970年)の制定以来、時代の変化などに合わせて何度も改正が重ねられており、直近では令和5年(2023年)に改正されています。
この改正では大きく3つの点が改正されておりますが、その中の2点についてはすでに令和6年(2024年)1月1日に施行されています。

そこで、この令和5年改正(以下「改正法」といい、改正前の従来の著作権法を「法」といいます。)について、簡単にその内容を紹介いたします。

改正の概要

まずは改正法で何が変わったのかといいますと、大きくわけて以下の3点となっています。

(1)著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等(※施行日未定)
(2)立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置(※2024/1/1施行済み)
(3)海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し(※2024/1/1施行済み)

この中で、(2)については、多くの人にとってあまり影響のない改正内容であると考えられますので、簡単に概要だけ触れておきます。

従来は、立法や行政のために内部資料として利用する著作物は、権利者の許諾がなくても複製(法42条)や譲渡(47条の7)を行うことが認められていました。
しかし、公衆送信等は認められていなかったため、例えば他人の著作物を含む資料を多くの関係者にメール送信したり、クラウドにアップして回覧させたりすることができませんでした。
そこで、法42条の内容を変更し、公衆送信または受信装置を用いて公に伝達することができるようにしました。
それに加え、特許審査等の行政審判手続きや行政手続きのための公衆送信等も可能となりました。(改正法41条の2第2項、改正法42条の2第2項)

なお、この改正で無許諾での公衆送信等が認められるのは「立法や行政」の目的に限られ、一般の会社や個人には適用されませんのでご注意ください。

新たな裁定制度の創設関連

裁定制度自体は従来から存在しており、著作権者が不明である等の理由により権利者と連絡がとれないような場合に、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することにより、その著作物を利用することができる制度です。
この制度により、著作権者と連絡がとれず利用許諾を得られないような著作物であっても、多くの著作物が利用を断念することなく適法に利用されています。

裁定制度により利用されている著作物は文化庁の「裁定実績データベース」で公開されています。

ただ、その一方で、連絡先が判明したため連絡したにも関わらず一向に返信が来ないような場合は対象外となってしまうなど、十分に活用できているとはいえない状況でした。

そこで、改正法では、上記のような利用可否についての著作権者の「意思」が確認できない著作物について、円滑に利用することができる新たな制度が設けられました(改正法67条の3)。

この”意思が確認できない著作物”という点が重要で、例えばSNSに投稿したイラストに対して「使わせてください」というDMが届いたとします。しかしこれを無視してしまうと、著作権者の意思が確認できない状態になりますので、新たな裁定制度を利用すれば利用することが可能になる可能性があるわけです。

裁定による利用が開始された後でも、この新たな制度による裁定は後述するとおり請求により取り消すことができますので、必ず利用が継続される、というものではありません。しかし、その請求を行う手間はかかりますので、権利者側にとっては負担になると考えられます。つまり、利用不可なのであれば、しっかりその意思を示すことが重要になってきます。

対象となる著作物は、公表され、または相当期間にわたって公衆に提供・提示されていることが明らかである著作物で、集中管理(日本音楽著作権協会や日本脚本家連盟、学術著作権協会、日本写真家ユニオンなど)されておらず、また利用の可否に関する著作権者の意思を円滑に確認できる情報が公表されていないものです。

このような著作物について、著作権者に関する情報が不明であったり連絡することが不能である場合、または連絡することはできたが一定期間経っても返答がない場合に、新たな裁定制度を利用することができます。

流れとしては、上記条件に該当する著作物を利用したい者が、窓口に対して申請を行うことで、窓口が利用料相当額を算出した上で文化庁長官に資料を送付します。それに基づき、文化庁長官によって時限的利用が決定されたときに、決定した額の補償金を支払うことで時限的な利用を開始することができる、というものになります。

ここで「時限的利用」というワードが気になったかと思いますが、この制度では、裁定によって定めた利用期間の上限内(最長3年)であり、かつ著作権者等からの申出があるまでの期間に限って著作物を利用することができます。

利用期間を経過した場合であっても再度申請することで更新することが可能です

従来の裁定制度は、著作権者等が判明した場合でも利用を継続することができますが、今回の新しい制度では、著作権者等が申し出た場合は、利用者が支払った補償金の一部がその著作権者等に支払われ、その後利用者との間でライセンス交渉を行う事で、裁定ではなく権利者からの利用許諾を得ることで利用を継続することができるようになります。
(つまり、ライセンス交渉の結果、権利者が利用NGといえば利用を終了しなければなりません。このあたりは著作物に対する通常の権利処理と同様です。)
なお、新たな裁定制度が設けられた後であっても、従来の裁定制度は残りますので、新旧どちらの制度を利用するのかは、利用したい著作物の状況や利用方法に応じて選択することになります。

また、裁定制度関連では、この新たな裁定制度の創設だけでなく、要件の確認や補償金の額の決定などの窓口業務について、文化庁長官の登録を受けた民間機関が行うことができるようになります(改正法104条の18〜104条の47)。
これは新たな裁定制度に限らず、従来の裁定制度における補償金等の受領に関する業務も担います。
これにより、従来よりも迅速で円滑な事務手続きの遂行が期待されます。

この新たな裁定制度や窓口業務の民間対応についての施行日ですが、原稿執筆日時点では決まっておらず、公布日(2023年5月26日)から3年を超えない範囲で政令で定める日とされています。
窓口業務を委託する民間機関の登録に関する準備など対応事項も多いため、施行されるまでもう少し日数がかかるかと思いますが、著作物のさらなる利用につながることが期待されます。

海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し

従来から、著作権を侵害された際に請求できる損害額について算定規定(法114条1項)が設けられており、著作権者等による損害額立証の負担を軽減することが図られていました。
しかし、近年では海賊版サイトなどを筆頭に被害の深刻化が進んでいるにも関わらず、従来の算定規定では十分な賠償額が請求できず、海賊版サイト運営者(以下「侵害者」といいます)などに利益の大半が残ってしまうような状況になってしまっていました。

これは、従来の算定規定では「海賊版の頒布によって減少してしまった、著作権者等が販売できたであろう著作物の数量」を失われた利益として考え、それを損害額として請求できるような既定であったため、損害賠償額は著作権者等が販売やライセンスなどをすることができる能力の範囲内しか既定されていなかったためです。

従来からライセンス料相当額を賠償額にすることができる規定(法114条3項)は存在していますが、販売等ができる能力を超える部分についても認められるかどうかは条文上明確ではなく、また裁判においてもはっきりとはしていませんでした。

そこで、今回の改正により、海賊版の販売や公開などの著作権侵害行為がなければ販売することができた著作物の利益額だけでなく、著作権者等が販売することができる能力を超えて販売などが行われた数量に対する「ライセンス料相当額」を損害額に加えることができるようになりました(改正法114条1項1号・2号)。
これは、無断で利用されたことによりライセンスを与える機会が失われたことにより失われた利益(逸失利益)として考えるものです。
しかも、このライセンス料相当額は、通常のライセンス料の金額ではなく、著作権侵害を前提として交渉した場合に決まるであろう額を考慮することができるようにもなりました(改正法114条5項)。つまり、一般的に、通常のライセンス料よりも高額になることが考えられます。

例えば、これまで1000部発行されている書籍(1冊あたりの利益400円)が、海賊版サイトで公開されて年間で50万回アクセスがあり、海賊版サイト運営者は1000万円の利益を得ていたとします。
この場合、従来の算定方法では、この著作権者が販売できる能力は1000部のため、1000部 x 400円=400,000円が損害額として算出されることになり、侵害者の利益と比べて大幅に低いものとなってしまいます。
しかし、改正法に基づく算定では、仮にライセンス料を1部20円だとした場合、ライセンス料相当額は(500,000アクセス – 1000部)x 20円=9,980,000円となり、先述の損害額40万円を加えて、合計10,380,000円を損害額とすることができるようになります。

ただし、侵害者が独自のコンテンツを追加した上で公開・販売しているような場合は、その独自コンテンツ分は無断利用された著作物とは別のものであるため、ライセンス料相当額からその分が差し引かれて算定される場合があります。

上記はあくまで架空の事例であり、必ずしもこのような算定になるものではありません。また、裁判所の判断により賠償額が少なくなる場合も考えられます。

このように、従来よりも損害額として認められる金額が大幅に増えることが想定されますので、被害の十分な補償に加えて、海賊版サイトなどの著作権侵害行為の抑制にもつながることが期待されます。

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