任天堂のゲーム画像や動画が投稿可能に?!ガイドラインの4つのポイント

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2018年11月29日、任天堂から突如発表された下記のガイドライン(以下「本ガイドライン」と呼びます。)が話題になっています。

ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン

任天堂といえば著作権に厳しい企業としても有名ですので、その会社が発表した”利用に関するガイドライン”となりますと、「もしかしてゲーム実況なども自由にできるようになるの!?」と期待したかもしれません。

ただ、これをもって任天堂のゲーム画像や動画(実況を含みます。)を自由に投稿できるようになったわけではありません。

このガイドラインの誤解しやすい点や重要な点を考察してみたいと思います。

この記事で引用している本ガイドラインは2018年11月30日現在のものです。
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ポイント1:対象は「適切な共有サイト」のみ

とても誤解しやすいのですが、本ガイドラインはどのようなサイトや行為に対しても適用されるものではなく、「適切な動画や静止画の共有サイトに投稿(実況を含む)すること」に対してのものとなっています。

そして、本ガイドラインに続いて公開されているQ&A内にて、何が”適切な動画や静止画の共有サイト”なのかに触れられています。

Q3.「適切な動画や静止画の共有サイト」とは、どのようなサイトですか。
A3.多くの方が一般的に利用されている動画や静止画の共有サイト、例えば YouTube や Twitter、ニコニコ動画等を想定しています。ただし、任天堂は、そうしたサイトへの投稿でも、内容が不適切なものや、ガイドラインに従わないものを削除することがあります。
本ガイドライン Q&Aより引用)

本ガイドラインは、ここで挙げられているYouTubeやTwittter、ニコニコ動画などの共有サイトへの画面キャプチャやプレイ動画、実況動画などを投稿することに対してのガイドラインですので、これらの共有サイト以外のサイトやサービスなどへの投稿や掲載については、そもそも本ガイドラインの対象外です。
これは、有償か無償か、営利目的なのか非営利なのかは関係ありませんので、共有サイト以外の個人サイトやブログ、紙媒体などへの掲載や投稿は対象外です

対象外ということは、投稿や掲載が行われた場合に任天堂は著作権侵害を主張する可能性が高いということが考えられます。

ポイント2:営利目的はダメ

先述の適切な共有サイトへの投稿であっても、営利を目的としている場合は本ガイドラインの対象外です。

そもそも「個人のお客様」に向けてのガイドラインであり、株式会社などの法人は(実態はどうであれ)営利を目的として設立されるものですから、本ガイドラインは対象外ということで、法人が無断投稿した場合は著作権侵害を主張してくることが考えられます。

一部の一般社団法人やNPO法人などは非営利目的で設立することもありますので、一概に法人=営利目的とは言えませんが、本ガイドライン本文において「個人であるお客様」が対象であることが明示されていますので、非営利であっても一般社団法人やNPO法人などは本ガイドラインの対象外であると考えられます。

また、個人であっても、営利を目的として投稿する場合は本ガイドラインの対象外です。
例えば、個人によるYouTubeへの投稿であっても、入場料が必要なイベントでその投稿動画を上映するようなものは「営利目的での投稿」とみなされるかもしれません。

なお、個人事業主は営利目的のために活動していますので、その個人事業の一環としての投稿であれば営利目的であると考えられるのではないでしょうか。
逆に、投稿という行為が事業とは結びつかない場合は「個人による投稿」であると主張することができると思います

ポイント3:収益化できるのは指定したシステム利用時のみ

営利目的での投稿はできませんが、任天堂が別途指定したシステムを利用する場合は、投稿によって収益を得ることができます

ではこの”別途指定したシステム”とは何か?といいますと、Q&AのQ4にて解説されています。

Q4.このガイドラインにおいて投稿を収益化することができる「別途指定するシステム」とは、具体的にはどのようなものですか。
A4.現時点において、このガイドラインにおいて投稿を収益化することができる「別途指定するシステム」とは、以下のものをいいます。
Facebookの「Facebook Game Streamer」および「Facebook Level Up Program」
ニコニコ動画/生放送の「クリエイター奨励プログラム」および「ニコニコチャンネル」
OPENREC.tvの「OPENREC Creators Program」
Twitchの「Twitchアフィリエイトプログラム」および「Twitchパートナープログラム」
Twitterの「Amplify Publisher Program」
YouTubeの「YouTubeパートナープログラム」
※随時更新されます。
本ガイドライン Q&Aより引用)

主に各投稿共有サイトが公式に提供する収益化プログラムを利用する場合は投稿でき、それによって収益を得ることもできる、ということになっています。

ポイント4:許諾ではなく禁止権の不行使

このガイドラインの特徴として、任天堂は自社ゲームの静止画や動画を投稿する権利(著作権法で定められている複製権、公衆送信権など)を許諾しているわけではない、という点が挙げられます。

許諾しているのではなく、あくまで投稿に対して「著作権侵害を主張しない」、ということです。

著作権法では、複製権や公衆送信権などを著作権者が”専有する”と定められていますので、著作権者が持つ権利を他人に許諾したり譲渡したりできる、という解釈ができる一方で、複製や公衆送信などを行う者に対してその行為を禁止することができる権利、という解釈もできます。
任天堂の本ガイドラインは、所定の条件を満たせば後者の権利(禁止する権利)を行使しません、と表明しているものと言えます。

よって、任天堂から動画などの投稿を許されたものではなく、投稿したとしても著作権侵害であると主張はしませんよ、ということですので、この点は誤解しないよう注意は必要かと思います。

体験の共有を期待

いろいろ限定的ではありますが、あの任天堂がこのようなガイドラインを発表したことは大いに歓迎すべきことだと思います。

ガイドライン内においても

任天堂は当社が創造するゲームやキャラクター、世界観に対して、お客様が真摯に情熱をもって向かい合っていただけることに感謝し、その体験が広く共有されることを応援したいと考えております。

このように述べており、任天堂が心血注いで作り上げたゲームやキャラクターなどが広く共有されるよう、本ガイドラインが策定されたものだと思います。

本ガイドラインを遵守して、そしてゲームやキャラクターなどへの愛情を忘れず、任天堂のゲームを楽しんだり共有したいですね。

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