違反注意!地図データ利用時に考える著作権と利用規約

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ビジネスでもプライベートでも、地図のデータ(画像)を利用するケースはとても多いと思いますが、どのような場合でも自由に使えるわけではありません。

利用できる場合とできない場合を、著作権と利用規約の両面から考えてみます。

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地図は著作物

まず前提として、地図は著作権法(以下「法」)10条で例示されている中の、6号「図形の著作物」に該当するため、通常は著作物として扱われます。

法10条1項6号 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

このように条文にも明示されていますし、また二次元の地図に限らず、三次元のもの、例えば地球儀などもこの図形の著作物に該当します。

また、美しくデザインされた地図であれば、「美術の著作物」として考えることもできます。

ただ、地図は実際に存在するものをその通りに表現する場合もあり、自由に創作できる範囲が狭いことも事実です。そのため、著作物性の判断において範囲が狭く限定的に認められることもあります。(「富山住宅地図事件」富山地判昭和53年9月22日など)
また、例えばSVG(Scalable Vector Graphics)データによって描画された地図は、その地図自体は著作物であると考えることもできますが、それを生み出した元であるSVGデータは”創作的に表現”されたものではなくデータ(数値)であるため、著作物であるかどうかの判断は難しいです。

著作物である以上、著作権法により保護されるため、権利者の許諾無くコピー(法22条)したりSNSやホームページに掲載(法23条)することはできません

これは、紙の地図であっても、ネット上で提供される地図であっても同様です。

県などによる不正利用が問題になったこともあります。
(※「県公式HPの地図1500枚、許諾得ず掲載 香川県謝罪」朝日新聞デジタル 2016年11月16日
県HPで著作権侵害の恐れ 宮城4000枚、岩手2000枚の地図掲載」産経ニュース 2017年3月31日 など)

画一的に許諾を与えるが「利用規約」

利用するためには権利者の許諾が必要であることが原則ですが、特にインターネット上で提供される地図において、個別に許諾を得るのでは無く、特定の条件において画一的に利用が許諾されている場合もあります。
その条件を定めているのが「利用規約」となります。

ここでは、無料で利用できることから誰でも一度は利用したことがあると考えられる「Googleマップ」を例に挙げます。

そしてそのGoogleマップの利用規約となるのが、主なものとして次の2つの文書です。
Google マップ & Google Earth (以下「ガイドライン」)
Google マップ / Google Earth 追加利用規約 (以下「追加規約」)

(他、Google 利用規約Google マップ / Google Earth 法的通知(以下「法的通知」)、Google プライバシー ポリシーも関連します。)

それぞれ、記事執筆時点で公開されている内容(最終更新日: 2015年12月17日。再確認2020年6月2日)に基づいて考えます。

Googleマップを利用する場合は、これらのすべての規約に同意が必要となりますが、利用したことで同意したものとみなされますので、これらの規約の内容に従う必要があります。

権利帰属の表示必須

ガイドラインには、次のように記載されており、「利用規約に従い」、「権利帰属が明確に表示」されていれば基本的に自由に使えるとされています。

基本的に、Google の利用規約に従い、権利帰属が明確に表示されていれば、用途に応じて、Google マップ、Google Earth、ストリートビューの画像を自由にお使いいただけます。ここでは、各用途についてさらに詳しく説明します。

利用規約に従うことはもちろん、重要となるのが「権利帰属を明確に表示」することです。

上図は当事務所の所在地をGoogleが提供する機能で表示したものです。地図右下の表示から、Googleだけではなく、地図データの提供元である(株)ゼンリンが著作権者であることがわかります。
(2019.3.22追記)現在は「(株)ゼンリン」の表記はクレジットから削除されています。

Googleマップでは、ゼンリンの他にも複数の法人などからデータの提供やライセンスを受けており、それらは法的通知内の2.6.18 Japan項に記載されています。

具体的には「Google マップと Google Earth の権利帰属表示に関するガイドライン」を参照いただきたいのですが、Googleが提供する手段(APIやカスタムマップの埋め込みなど)を用いた場合は、上図のように自動的に表示されますので問題ないと思います。

しかし、このような公式の利用ではなく、例えば地図の画面をスクリーンショットしたりキャプチャしたりする場合や、印刷して利用するような場合についても権利帰属表示は必須ですので、削除や変更することの無いよう十分に注意が必要です。

仮に利用規約に従わず、「私的複製」(法30条)を主張して利用した場合であっても、その複製行為自体には著作権は及びませんが、著作者が有する「氏名表示権」(法19条)の侵害であるとみなされる可能性はあるため、権利帰属を削除できる余地はほぼ無いものと考えられます。

印刷広告での利用は不可

Googleマップは印刷機能が付いていることからもわかる通り、基本的には印刷して利用することは可能です。

Google マップと Google Earth には、印刷機能または(Earth Studio への)書き出し機能が備わっています。商用目的でなければコンテンツを印刷し、拡大する(地図に道順を表示するなど)ことができます。コンテンツを含む印刷物を配布する場合は、最初に上記の一般的なガイドラインをお読みになり、特にフェアユースと権利帰属に関する規約にご留意ください。
ガイドライン「印刷物での使用」より)

書籍、雑誌などの定期刊行物、プレゼン資料や提案書などのビジネス文書においてもGoogleマップを利用することができるのはとても便利ですね。

しかし、「印刷広告」については利用は許諾されていません。(他、道案内を目的とするガイドブック、Tシャツなどの商品や商品パッケージにおいても使用不可とされています。)

印刷広告では、Google マップ、Google Earth またはストリートビューの画像を使用することはできません。
ガイドライン「広告での使用」より)

チラシなどで自社や店舗の所在地を示すためにGoogleマップの地図をコピーして利用するためには、Googleからの許諾が必要ということになります。
許諾無く印刷広告に利用したような場合は、Googleやゼンリンなどに対する著作権(複製権、譲渡権)侵害になると考えられます。

Yahoo!地図も同様

なお、同種の地図サービスである「Yahoo!地図」においても、Googleマップ同様に印刷広告での利用は許諾されていません

■印刷広告・ちらしなど紙媒体での利用について
印刷広告・ちらし、その他の種類の印刷物いずれにおいても地図および、航空写真、衛星写真の二次利用はできません。(私的複製の場合を除く)
(「Yahoo!地図ヘルプ」より)

適法な利用を心がけよう

地図については著作物であるという意識が低く、利用に関しても気軽に考えてしまうことも少なくないと思いますが、実際には著作権法で保護される著作物であるため、提供元が提示する規約や条件を守ることは必須です。

特にビジネス、営利目的で利用する場合は、しっかりと利用規約などを確認し、適法な利用となるようご留意ください。

【更新】2020/06/02 Googleマップの各ガイドラインのリンク先および引用内の文章を更新しました

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