非親告罪化を限定的にできるか?権利者からも慎重な意見多数

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著作権関連では大きな動きのある、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)。
すでにご存じの方も多いと思いますが、著作権侵害に対する「非親告罪化」と、著作権の「保護期間延長」が大きな話題となっています。

その非親告罪化についての影響について危惧する意見が多い中、本日11月4日に文部科学相の諮問機関である文化審議会著作権分科会の小委員会にて、重要な会合が行われました。

2次創作は非親告罪化の対象外に 文化審議会の小委員会、方向性まとまる
(ITmediaニュース 2015年11月4日)

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2次創作は含めない方向で進める

非親告罪化は、TPP合意によってすぐに効力を持つわけでは無く、国内法の整備(著作権法の改正)によって効力を持ちます。
その著作権法改正に向けて関係者、有識者の間で議論が行われますが、本日の会合はその方向を決める上で重要なものでした。

その中で、特に様々な方面から懸念の声が上がっていた、非親告罪化にコミケや同人誌などの2次創作が含まれるのかどうかについて、「含めない方向で進める」という見解でまとまったようです。

各団体からのヒアリングの後、非親告罪化について土肥主査が「2次創作などは含めない方向で進めたい」とまとめたのに対し、委員から異論はなかった。

この方向での著作権法改正ということになれば、日本の創作文化の一翼を担っている2次創作関係者もひとまず安心できるのではないでしょうか。

権利者側からも慎重な意見

今回の会合にて注目すべき点として、コミケ準備会といった利用者側ではなく、JASRACや日本映画製作者連盟といった権利者側からも非親告罪化について(公式に?)慎重な意見が出されたことです。

非親告罪化について、権利者側からは「海賊版対策に有効だが、『商業的規模』や『原著作物の収益性に大きな影響を与えない場合』について明確化を図り、被害者が処罰を望んでいるか否かを十分考慮するなど適切に制度が運用されるべき」(JASRAC)、「映画作品のデッドコピーなど、極めて悪質な行為を対象とすれば十分」(日本映画制作者連盟)など、慎重な意見が相次いだ。

この非親告罪化については、そもそも海賊版対策という目的があり、権利者からの告訴が無くても違法コピー、海賊版を取り締まることができるというメリットがあります。
ただ、どんな事象に対しても非親告罪化を導入してしまっては不当に利用者の権利を侵害してしまう恐れもあるため、政府が公表したTPP概要に依れば、収益に大きな影響のある「複製等」について非親告罪化する、という合意内容となったようです。

故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪とする。ただし、市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。
環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要 内閣官房TPP政府対策本部 平成27年10月5日 より)

2次創作への非親告罪化については、これまで権利者団体からはそういった要望は出されていませんでしたが、今回の会合で「非親告罪化を勧めているわけではない」ことがより一層明確になったのではないでしょうか。

国内法整備に注視

TPP合意したことにより、これから国内法の対応が進みます。
また、非親告罪化だけではなく、著作物・実演・レコードの保護期間延長(現行の50年から70年に伸ばす)という点についても議論が進められると思います。

「TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム」からは”死後50年ないし公表後50年の経過以前に登録がされることを条件に、作品を延長保護する制度”が提案されています

最終的に著作権法はどのような条文となるのか、今後の動向から目が離せませんね。

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