ネット配信を始める前に考える著作権

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この原稿を書いている2020年4月現在、感染症対策により外出自粛要請が出されているため、学校や幼稚園などに行くことができず、また外でも長時間遊べないなど、子どもたちの自宅での過ごし方に悩んでいる方も多いと思います。
また、通学・通勤の自粛や要請により、家で学習や仕事を行っている方も少なくありません。

そんな方たちのために、様々なコンテンツをネット配信で届けよう、という動きが活発になってきています。

ただ、配信する映像や音声に著作物が含まれる場合は、著作権について留意しなければなりません。これは通常時も非常時も同様です。

そこで、コンテンツをネット配信する場合に知っておくべき、そして対処しておくべき点をまとめてみますので、ネット配信を実際に始める前にぜひご確認ください。
なお、この記事では便宜上”ネット配信”と表記しますが、これにはYouTubeやニコニコ動画、Instagramなどを利用した配信だけでなく、TwitterやFacebookなどSNSへの投稿も含みます。

また、著作物を配信する場合は著作権の処理が必要となりますが、絵本などであっても著作権の保護期間が経過したものや、権利者が予め許諾しているものは、特段の手続きなく読み聞かせ・朗読配信することができます

ネット配信に関係する著作権

単に”著作権について考える”とは言っても、具体的にどのような点について確認や検討が必要となるのかが分からないですよね。

そこで、まず知っておきべき点が2つあります。
ネット配信は「公衆送信」
許諾がない限り、公衆送信できるのは著作権者だけ

それぞれ詳しく考えてみましょう。

まず、ネットを通じた配信は著作権法(以下「法」といいます。)23条1項で規定される「公衆送信権」に関係してきます。

配信動画を作成・編集する段階で著作物をPCなどに取り込む(写真や動画撮影、CDからのコピー(ダビング)など)ことは多いと思いますので、その場合は公衆送信権に加え複製権(法21条、91条、96条)も関係してきます。

いきなり「公衆送信」と言われても何?と感じると思いますが、公衆送信とは「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことをいう。」(法2条1項7号の2 ※条文からカッコ書きは省略しました)と定義され、具体的にはテレビやラジオなどの放送、ケーブルテレビなどの有線放送、そして自動公衆送信が含まれます。

この「自動公衆送信」とは、公衆からの求めに応じて自動的に行う公衆送信(法2条1項9号の4)のことで、ホームページや、この記事のテーマであるネット配信が該当します。

さらに、この自動公衆送信を行うためにデータがサーバにアップロードされた状態を「送信可能化」といい、送信可能化も公衆送信に含まれる(法23条第1項)とされています。そのため、たとえ訪問者ゼロのホームページも、再生回数ゼロのYouTube動画であっても、データがネット上にアップロードされていますので公衆送信に該当します。

次のポイント、「許諾がない限り、公衆送信できるのは著作権者だけ」については、公衆送信権に限らず、法で「著作者の権利」として規定される権利は著作者が”専有”すると定められています
そのため、公衆送信できるのは著作者だけ、ということになります。

著作者の権利は他人に譲渡できますので、例えば著作者AさんからBさんに対して公衆送信権が譲渡されている場合は、Bさんが著作権者となり、公衆送信できるのはBさんだけ、となります。
なお、この場合、特段の契約がなければ、自身が作成した著作物であってもAさんは公衆送信することができません。

つまり、著作権者ではない人が無許諾で公衆送信を行うと、それは法に違反している、ということになります。

音楽については、多くの音楽の著作権を管理するJASRACとYouTubeやニコニコ動画などの一部サービスとの間で包括的な利用許諾がなされているため、こういったサービス上でJASRAC管理楽曲を使う場合は個々の投稿者が個別に許諾を得ることなく利用できます。
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著作隣接権としての公衆送信

先述の公衆送信権は著作者(著作権者)の権利でしたが、もうひとつ、検討が必要なポイントがあります。
それが、著作隣接権としての公衆送信(送信可能化)です。

俳優、ミュージシャン、ダンサーなどの実演家に対しては法92条の2で、レコード会社などのレコード製作者に対しては法第96条の2において規定され、送信可能化する権利は実演家やレコード製作者が専有するとされています。

つまり、下記例外を除き実演家やレコード製作者の許諾なく送信可能化した場合は、法に違反していることになります。

例外として、実演家の許諾を得て録画された録画物(「ワンチャンス主義」と呼ばれます。なお、”録画”されたものに限られ、CDなど”録音”されたものは含まれません。)と、映画の著作物に収録されている実演でサントラ盤等以外のものに録音・録画されているものには適用されません(法92条の2第2項各号)

上記例外を考慮しますと、実際に影響が及ぶのはCD音源や配信音源などの「音楽」が主なものとなり、例えば”歌ってみた動画”用に市販音源やカラオケ音源を利用するような場合や、市販音源を用いてDJミックスを配信するような場合が該当します。
これらの利用において、原盤権(※一般的には実演家の権利とレコード製作者の権利が一部融合したものであるため)を有する者から許諾がない場合は、法に違反していると言えます。

ニコニコ動画・ニコニコ生放送では、一部の楽曲についてレコード会社などの原盤権者から許諾を得ているため、この場合は個別に許諾を得ることなく利用することができます。詳細はこちら

実はこれもダメ・・・よくある誤解

お話会をネット配信

図書館や児童館などで子どもたちに絵本の読み聞かせや朗読を提供しているところも多いですが、それをネット配信するためには絵本など配信する本の著作権者からの許諾が必要となります。

なお、ネット配信ではなく、子どもたちの前で実際に読む場合は、一定の条件(営利を目的にせず、読む人に報酬が支払われず、聴く人が無料で参加できること。法38条1項)を満たせば著作権者の許諾は不要です。

そのため、「今までのお話会と同じで参加無料でボランティアスタッフが読むからネット配信も大丈夫」と考えてしまいがちですが、先述の”一定の条件”は、上演、演奏、上映、口述の場合に限られているため、公衆送信は対象外です。

絵本自体は映さない、話しているだけなら大丈夫

先述のお話会に関連しますが、絵本自体や挿絵などを配信しなければ大丈夫?と思うかもしれません。

しかし、その場合であっても、絵本の内容(文章部分)を公衆送信していることには代わりありませんので、著作権者からの許諾は必要です。

個人が無償でやっているから大丈夫

著作権の問題がでてくるのは商用利用の場合だけ、と思っていませんか?
これもよくある誤解ですが、個人なら大丈夫、お金を得なければ大丈夫、というのは間違いで、法では個人か否かや、有償無償かは関係なく、法に定められている利用(複製や公衆送信、上演、演奏、上映など)ができるのは著作者だけ、というルールが大原則です。

なお、例外として、私的使用(個人的または家庭内など限られた範囲)の場合は許諾なく利用できる規定(法第30条1項)があるのですが、これは「複製」に限られています
ネット配信は複製ではありませんので、著作権者の許諾なしで公衆送信することはできません

これはいわゆるキャラ弁キャラケーキなどを撮影してSNSに投稿する場合も同様です。著作物であるキャラクターをお弁当やケーキの装飾とすることは「複製」に該当しますが、そこまでは上記の”私的使用のための複製”という法の例外規定により合法です。しかし、SNSにアップするという公衆送信は例外規定の対象外です。
(※なお、店舗が商品として作ったり、個人でも販売目的である場合は、許諾がない場合はその複製行為(キャラ弁やキャラケーキを作ること)自体が複製権侵害であると考えられます。)

ストップモーション動画

フィギュアやぬいぐるみなどを少しずつ動かして写真撮影(コマ撮り)し、それをつなぎ合わせるというストップモーション・アニメーションという技法により作成された動画もよく見かけます。

この場合、コマ撮りという行為が著作権法でいう「複製」になりますので、撮影したフィギュアやぬいぐるみなどが著作物である場合は、無許諾での撮影は複製権の侵害となりますし、その写真をSNSなどにアップしたり、撮影した写真によってアニメーションを作成してそれをSNSなどにアップした場合は公衆送信権の侵害となるおそれがあります。

ただし、「引用」(法32条1項)の要件を満たす利用方法であれば適法に利用できる場合があります。

配信も、権利も、どちらも大切

お話会も、音楽などを使った動画配信も、子どもたちだったり困っている人たちのために何かしてあげたいという善意によってなされているのだと思います。
また、非常時なのだから少しくらい著作権なんて無視しても良いだろう?!、という意見もあるかもしれません。

しかし、権利者の権利を守ることもとても重要です。
困っている人のためであれば、他人の権利を侵害しても良いということではありません。
絵本作家や音楽家などは、自身の権利をお金に変えることで新たな創作活動を行うことができるのであって、利用者側の理屈だけで権利者側の権利を制限してはならないと筆者は考えています。

しっかりと権利者から許諾を得て、必要ならば適切な対価を支払って、多くの困っている方たちに著作物を届けてほしいと思います。

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