ウェブデザインに著作権は主張できるのか?!

シェアする

「公式ホームページに掲載している個々の情報(文章、写真、イラストなど)は、著作権の対象となっています」
このような記載のあるホームページというのは多いと思います。

確かに、”個々の情報”は著作物である場合が多いです。
でも、そのホームページのデザインについては、著作物と言えるのか?!
デザインを作成したウェブデザイナーは、著作権を主張できるのか?!
について考えてみたいと思います。

※この記事では企業などがウェブ制作会社に依頼して制作するウェブサイトについて、受託側のウェブデザイナーに係る著作権について取り上げています。それ以外の状況では考え方が異なる場合がありますのでご了承ください。

※著作権を主張できる、著作物であるかどうかは、最終的には裁判所の判断となり、この記事で断定するものではありません。

スポンサーリンク

まずは「著作物である」と考えよう

著作権の基本原則として、創作的な活動によって生み出されたものは、それを作った人に権利を与えよう、というものがあります。
権利を与え、法律(著作権法)で守ってあげるところからスタートします。

よって、ウェブデザインというものも、おそらく創作的な活動によって生み出されたものであると思いますので、まずは著作物だと考えても良いかと思います。

特に、言うだけなら自由です。
ひとまず最初は「私(当社)の作ったウェブデザインは著作物です!」と主張しておきましょう。

認められない可能性も考えられる

ただ、実は著作物だとは認められない可能性というのも存在します。

現時点(2015年6月4日)でウェブデザインの著作物性について言及した裁判例が存在しないため、あくまで推測ではあるのですが、次のような事が考えられます。

その1:レイアウトは著作物とは認められない

著作物であるかどうかは、著作権法第2条1項1号で定義されているとおり、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に該当するか否かで判断され、該当すれば著作物ですし、該当しなければ著作物ではありません。
これが大前提ですよね。

そして、一般的にレイアウトというものは「アイデア」であって、創作的に表現したものではない、つまり著作物の定義に該当しない、と言われています。

ウェブデザインにおいても、レイアウトというのは比較的重要な要素です。
設計段階においてワイヤーフレームを作るケースも多いですが、そのワイヤーフレームによって決められたレイアウトを基にウェブデザインが制作されます。

以上のことから、「ウェブデザインって要はレイアウトの延長でしょ?」と言われてしまうと、著作物とはみなされない可能性が出てきてしまいます。

その2:クライアントから提供された素材を元にデザインしても”処理”とみなされる

直接ウェブデザインについてのものではありませんが、とある商品の販促ツールデザインについての著作権侵害訴訟の中で、そのデザインについて制作者側の著作物性が否定された事例があります。
(大阪地判平成24年1月12日)
(※原告はデザイン制作者、被告はその制作を依頼した側です。)

しかし,商品イメージやキャッチフレーズ,モデルの写真などの素材は,被告らから提供されたものであって,原告が制作過程において行った作業(製造過程における作業を除く。)は,デザイン,レイアウト(素材のレイアウト),配色,仕上げの各作業に過ぎず,本件デザイン画に著作物性を認めることはできない。
(略)
もっぱら顧客の注意を引き,購入意欲を喚起するために,被告らから提供された素材をどのようにレイアウトしたかということや,仕上がりに高級感を持たせるためにいかなる処理をしたかをいうものに過ぎない

判決文の中ではこのように述べられており、デザインであっても著作物性は認められませんでした。
この「クライアントから提供された素材を見栄え良くデザインする」ということは、ウェブサイトの受託制作においても共通する状況ではないでしょうか。

裁判においてこのように判断されてしまうと、著作物性が否定されてしまう可能性がでてきてしまいます。

まとめ

基本的に、ウェブデザインも著作物であるという考えにより、ウェブデザイン制作者は著作権を主張することができますし、発注側のクライアントにも権利譲渡することができます。

ただし、著作権侵害の争いとなってしまった場合、裁判所の判断によっては著作物ではないとみなされる可能性もゼロではないことは知っておいても良いかも知れません。
”絶対に著作物だ”と断定することはできない、ということですね。

余談:著作物としての種類

ウェブデザインが著作物だとしたら、それはどんな種類の著作物となるのでしょうか?

著作権法第10条で著作物が例示されていますが、ビジュアルデザインであることを考えると、その中ではおそらく「美術」の著作物となりそうな気はします。

ただ、ウェブサイトは写真やイラスト、原稿といった著作物の集合体であるため、それらの選択又は配列によって創作性を有する「編集著作物」(著作権法第12条)だとする考えもあります。

美術の著作物であろうが編集著作物であろうが、その種類によって権利が変わるものではありませんので、どっちでも良いのではと思っています。
種類は限定せず、単に「著作物」と言っておいた方が間違いが少ないとは思いますが、あえてどちらか選ぶとすれば、個人的には「美術」のほうではないか?と考えています。

サイトによっては「ホームページは編集著作物です」と断言しているところもありますが、、、。
スポンサーリンク