先日、選挙ポスターの著作物性についての記事を書きましたが
(こちら: 選挙ポスターの写真をブログ等にアップするのは著作権的にどうなのか? )
それに関連してネット検索している際に、Q&Aサイト「OKWave」にて「公費で作成された選挙ポスターの著作権について」という質問を発見しました。
確かに、一般の人や民間企業がお金を払った場合と、公費を使って支払った場合とで著作権の扱いについて違いがでるのか疑問に思いますよね。
公費なのだから、選挙管理委員会とか総務省とか都道府県とか、あるいはそれ以外の公的な機関が著作権の帰属先となるのか?!
ということで、公費で作成された選挙ポスターについて、著作権が誰に帰属するものなのかを考えてみます。
著作権の大原則1:無方式主義である
そもそも、著作権とは、いつ、どのように、誰に対して発生するのか?を考えてみます。
日本の(というか、ほぼ全世界の)著作権法は、ベルヌ条約という国際ルールに則って制定されており、そのベルヌ条約では「無方式主義」を採用しています。
この「無方式主義」とは、著作権の発生について、登録などの手続きが不要である、つまり自動的に発生するものだという意味になります。
この点が、特許や商標、意匠などの他の知的財産権とは違う、著作権の特徴でもあります。
著作権の大原則2:著作権の対象となるのは著作物だけである
選挙ポスターには、著作権が関連しそうなものとして
- 候補者の顔写真
- キャッチコピー、スローガン
- 候補者プロフィール
- ポスターそのもののレイアウト、デザイン
以上の物が考えられますが、実際に著作権が関係する「著作物」だと言えるのは「候補者の顔写真」だけだと考えるのが一般的なようです。
キャッチコピーやスローガンも選挙ポスターに掲載するものは短い文章であることが多く、これもまた「ありふれた表現」とみなされる場合が多いです。このような「ありふれた表現」は著作権法および各種裁判により著作物とはみなされません。
また、候補者プロフィールも、独創的な文章ではなく事実を並べただけとなる場合が多いため、創作的な表現とはみなされないようです。
つまり、著作権があるとすれば顔写真を撮影したカメラマンに認められるものだけと考えられます。
著作権の大原則3:著作権は著作者に認められる
著作権を行使できるのは原則として著作物を創作した人、つまり著作者です。
決して「お金を払った人」ではありません。
つまり、これが重要なポイントで、お金を払ったかどうかはまったく関係ありません。
また、お金が関係しないということは、誰が払ったものでも、お金の性質が何であっても、関係無いということです。
著作権の大原則4:著作権は契約によって譲渡できる
原則3の通り著作権は著作者に対して認められるものですが、著作権というものは譲渡することができます。
つまり、著作者以外が「著作権者」という著作権を行使できる立場になることもできます。
ただ、著作者以外が著作権者となるのは、著作者から契約によって譲渡された場合のみです。
契約が無い状態で、勝手に移動する(譲渡される)ことはありません。
まとめ:では著作権者は誰になるのか?
以上の原則から、著作権が発生するのはカメラマンのみで、選挙ポスターに使う以上、候補者側(候補者本人または後援会事務所など)に著作権が譲渡されているか、または候補者側が写真の利用許諾を得ているものと考えられます。
また、この権利譲渡または利用許諾においては、支払者もお金の性質も関係ありません。
つまり、原則として公費かどうかは関係無く、通常の写真の著作物という扱いで候補者側(またはカメラマン)が著作権を保有(=帰属)する、という結論になります。
※ただ仮に、その公費を受け取ったり利用したりする際に「公費で作成されたポスターの著作権は○○に帰属するものとする」のような契約があれば、原則4の通り、著作権が譲渡されて○○に帰属します。