著作権法の2つの改正法が施行目前!概要を知っておこう

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現在の著作権法は1970年(昭和45年)に旧著作権法(明治32年)を全面改正して施行されたもので、その後も比較的改正の多い法律としても知られていますが、実は今後数か月の間にまた改正されることが決定しています。
しかも、2つの改正法がとても近い時期に施行されるという、珍しい状況となっています。

そこで、具体的にどこがどのように変わるのか、2つの改正法を見ていきたいと思います。

著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)

まずは平成30年5月18日に成立した改正法で、一部を除き来年平成31年1月1日から施行されるものです。

この改正は権利制限規定(※)の追加・変更が主なものとなり、おおまかには以下の4点となります。

  1. デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備
  2. 教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備
  3. 障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備
  4. アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等
権利制限規定:著作権者の権利を制限し、権利者の許諾が無くても利用者で利用できる場合を定めたもので、私的使用のための複製(30条)や引用(32条)などがあります。

条文を読んでも非常に難解ですので(1~2度読んだ程度では理解できません。。。)、簡単に概略をご紹介致します。

デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備

柔軟な権利制限規定とは何か?ということですが、そもそもは何年も前から議論されている、アメリカ等で導入されている「フェアユース規定」の日本版みたいなものを導入するか否か、という議論を発端とするものであり、結局はフェアユースは導入せず、その代わりにもっと柔軟性を持たせた権利制限規定を追加するという形になったようです。

今回は、デジタル化・ネットワーク化に対応するための権利制限を新たに規定したもので、具体的には次のような利用について、権利者からの許諾が不要となります。

I. 著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用

著作物に表現された芸術性などを鑑賞したりするのではなく、もっと機械的に著作物を処理するような場合、例えば次のような行為が該当します。ただし、著作権者の権利を不当に害する場合は除きます。

【AI学習のためにデータベース化する】
【情報を解析し、2つの文書の類似点だけを抽出して表示させる】

これらの点は、現行法でも「技術開発・実用化の試験のための利用」に限って無許諾で行うことができたのですが、これでは目的が限定的すぎて”柔軟性”が無いため、改正により目的を限定せず、利用方法も限定せずに利用することができるようになります。

II. 電子計算機における著作物の利用に付随する利用等

こちらも現行法でも限定的には無許諾利用が可能だったのですが、”柔軟性”を持つように改正され、目的や利用方法を限定せず、電子計算機での利用を円滑または効率的に行うための利用に付随する利用目的である場合は、無許諾で複製や公衆送信などの利用ができます。なお、こちらも同様に、著作権者の権利を不当に害する場合を除きます。
具体的には

【サーバなどでのキャッシュのための複製】
【サーバなどの保守・修理・交換などのための一時的な複製】
【データ消失などに備えたバックアップとしての複製】
【ネットワークでの情報提供準備に必要な情報処理のための複製等】

これらの複製等を無許諾で行うことができます。

III. 電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等

いわゆる検索エンジンのための複製等であれば現行法でも利用できましたが、あくまでインターネット情報検索に限られていたため、それ以外のアナログ情報などを含めた検索などは対象外でした。

これでは今後のニーズにも対応していくことが難しいため、社会的意義の認められる目的での軽微な利用であれば、利用方法を限定せずに利用できるようになります。

具体的には、次のようなものとなります。

【蔵書の中から検索されたキーワードを含む書籍のタイトルや所蔵場所とともに、検索一致した文章の一部を表示する】

教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備

現行法でも、教育機関の授業であれば、著作物のコピーや遠隔合同授業のための公衆送信であれば利用可能でしたが、それ以外の公衆送信、例えば授業の予習・復習のために著作物の一部をメールで送信する、といった利用は権利者からの許諾が必要でした。
今回の改正により、遠隔合同授業以外の目的での公衆送信でも無許諾で利用できるようになります。

ただし、教育機関は、一定の補償金を支払う必要があります
補償金の支払いは必要ですが、従来は個々の権利者から都度許諾(と対価支払い)を得る必要があったわけですから、それが文化庁長官が指定する補償金徴収分配団体に対して支払うだけで済むようになり、利用の手間はかなり軽減されるものと考えられます。

なお、この改正のみ、平成31年1月1日施行ではなく、施行日は「公布の日(※平成30年5月25日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。

障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備

現行法では視覚障害者の利用に限って書籍に音訳などができる規定となっていますが、マラケシュ条約(盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約)締結のために、例えば肢体不自由のために本を持てない、ページをめくれないなど、視覚障害に限らず障害によって本を読むことが困難な人にもその対象を広げるものとなります。
対象となる利用者を広げるための改正であるため、現行法(37条)における変更箇所も少ないです。

アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等

文化資料を適切に収集・保存(アーカイブ)して効果的な活用に繋げるために、以下の3点の権利制限規定が改正されます。

I. 国立国会図書館による外国の図書館への絶版等資料の送信

国立国会図書館は、絶版などの理由で入手困難である、あるいは原本の滅失、損傷、汚損などを避けるために、著作物を電子データ化することが認められており(法31条2項)、現行法においては日本国内の公共図書館などに限ってこのデータ化された資料を送信することができるのですが、今回の改正により外国の図書館にも送信することができるようになります。

II. 作品の展示に伴う美術・写真の著作物の利用

美術館などで美術作品を展示する場合において、作品を紹介したり解説したりするために、小冊子にその作品を掲載することができますが、今回の改正により、小冊子に限らずタブレット端末のような電子機器にも作品を掲載することができるようになります
また、ウェブサイトやメールマガジンなどにおいて、作品を紹介するためにサムネイル画像を掲載することもできるようになります。
ただし、上記いずれも著作権者の権利を不当に害する場合を除きます。

正直なところ、「え?今までできなかったの?」と言いたくなるような規定ですが、ようやく合法的にできるようになります。

III. 著作権者不明等著作物の裁定制度の見直し

著作物を利用するために相当な努力をして著作権者を探したのに見つからず、利用許諾を得られないという場合は、文化庁長官に申請して、通常の使用料相当額を供託することで利用できるようになる「裁定制度」(法67条~70条)というものがあります。
今回の改正により、権利者が見つかった場合に確実に補償金を支払うことができると考えられる国や地方公共団体などについては、事前の供託を求めないものとされます。
また、裁定申請中に著作物を利用する場合は、担保金を供託すれば利用できるのですが、改正により国や地方公共団体はこれも免除されることとなります。

この改正により、権利者不明のため利用できなかった著作物であっても、国や地方公共団体が利用する場合は裁定のハードルがかなり下がったため、円滑な利用が期待されます。

環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律(平成30年法律第70号)

元は「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」として平成28年12月16日に公布されたものですが、アメリカの環太平洋パートナーシップ協定(以下「TPP」)離脱に伴い改正され、上記法律名にて平成30年7月6日に公布されたものです。
この法律に、著作権法の改正も含まれています。

施行日は「TPPが日本国について効力を生ずる日」とされていましたが、TPPの発効が確定したため、発効日である平成30年12月30日から施行されることになります。

TPPによる著作権法改正は、ニュースでも何度も取り上げられていましたので、なんとなく概要はご存じの方も多いかと思いますが、ここで改めてまとめてみますと、大きく以下の5つの点が改正されます。

  1. 著作物等の保護期間の延長
  2. 著作権等侵害罪の一部非親告罪化
  3. 著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備(アクセスコントロールの回避等に関する措置)
  4. 配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与
  5. 損害賠償に関する規定の見直し

著作物等の保護期間の延長

圧倒的に”否”のほうが多い印象であった賛否両論の中、著作者の死後などから50年であった保護期間が70年になります。
なお、20年延長されるからといって、一度保護期間が切れたものは復活しませんのでご注意ください。

著作権等侵害罪の一部非親告罪化

現行法では、著作権侵害の多くは著作権者のみが告訴できるという「親告罪」ですが、その一部について、非親告罪にするというものです。

すべての著作権侵害が非親告罪化されるのではなく、以下のすべての要件を満たす場合に限って、非親告罪となります

①対価を得る目的があること
②有償著作物等(権利者が有償で公衆に提供・提示している著作物)について原作のまま譲渡・公衆送信または複製を行うものであること
③有償著作物等の提供・提示により得ることが見込まれる権利者の利益が不当に害されること

具体的には、いわゆる「海賊版」を販売したりネットで提供したりする行為が非親告罪となり、権利者の告訴がなくても公訴を提起できるようになります。
コミケなどで販売される同人誌などの二次創作物は、原作をそのまま販売しているのではなく、原作に独自のアレンジやパロディを加えたり、原作の設定や物語感、キャラクター設定などを流用したりしているものであるため、上記②の要件を満たしません
そのため、非親告罪化の対象とはならず、従来通り親告罪のままとなります。

二次創作物が著作権侵害にならないという意味では無く、二次創作物による侵害に対しては親告罪であることには変わりありませんので、原作の権利者から権利侵害であると提訴される可能性は残ります。

著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備(アクセスコントロールの回避等に関する措置)

現行法では、コピープロテクトなど著作権侵害を防止または抑止する技術的保護手段だけが定義されており、それを不正に解除したりする行為が著作権侵害とみなされていましたが、改正法では、著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段、いわゆるアクセスコントロールを「技術的利用制限手段」と定義し、それを不正に回避する行為(※著作権者の利益を不当に害しない場合を除く)を著作権侵害行為とみなすようになります。

なお、著作権侵害行為とはみなされますが、刑事罰の対象とはならず、民事上の請求のみ可能となります。
ただ、このような回避を行う装置やプログラムを販売したりすることについては刑事罰の対象となります。

配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与

現行法では、CDなどを用いて放送や有線放送が行われた場合は、そのCDに関する実演家やレコード製作者は放送事業者などに対して使用料を請求できるとされていますが、今回の改正により、CDなどではなく、インターネットなどを通じて直接配信される音楽(配信音源)についても、放送などで使用された場合は使用料を請求できるようになります。

最近はネット配信のみの楽曲も存在することから、こういった請求権の拡大は必要なものだと考えられます。

損害賠償に関する規定の見直し

現行法では、権利侵害された著作権者が侵害者に対して請求する損害賠償額について、

  • 侵害物の数量×正規販売していた場合の利益額
  • 侵害者が受けている利益額
  • 使用料として規定している額

のいずれかで算出した額とすることができるとされています。

改正法では、これらの算出方法に加えて、例えば音楽であればJASRACやNexToneなど、書籍などでは出版者著作権管理機構(JCOPY)などの著作権管理事業者によって管理されている場合は、その管理事業者が定めている使用料規定によって算出した額を損害額として賠償請求できるようになります。

まもなく施行

これらの改正法が施行されるのもまもなくです。

権利制限規定が追加されて、権利者の許諾がなくても利用できるシーンは増えることになりますが、その一方で権利保護期間は20年も延長され、権利制限規定に該当しない方法での利用の際には、権利者からの許諾が必要となる期間も長くなります。

改めて著作権法をしっかりと確認し、著作物の適法な利用を心がけるようにしたいですね。

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