意外に重い!著作権侵害の罰則

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他人の著作物を無断利用したり、他社のウェブサイトに掲載されている原稿をそのまま転載(パクる)というような行為をつい行ってしまったことはないでしょうか?
うっかりという場合もあるでしょうが、意図して無断利用しているケースも少なからず存在してのが実情だと思います。

でも、甘く見てはいけません。
実は、著作権法および民法には権利侵害についてしっかりと対抗措置や罰則が定められています。

「著作権なんて」と気軽に考えていると、大変な事態となる可能性がありますので要注意です。

2016/06/28追記:著作権の侵害かどうかは十分な比較検討が必要であり、裁判所の判断によって確定する場合もあります。似ているからといって常に著作権(複製権、翻案権等)の侵害となるわけではありません。この点は十分にご注意ください。
(参考) 似ている=著作権侵害ではない!侵害判断のキホン

民事上の対抗措置

権利者は、民事では次の4点について侵害者に対して対抗することができます。
これらの請求は、どれか1つということではなく、理由があれば4つすべてを請求することもできます。

差止請求

まず権利者(著作者、著作権者、出版権者、実演家または著作隣接権者)は権利を侵害する者や侵害するおそれのある者に対して差止請求をすることができます。(著作権法112条)
例えば無許諾のイラストを掲載した本を出版した場合は、その本を回収しなければならなくなり、多額の回収コストがかかります。

損害賠償請求

さらに、損害賠償請求もできます(民法709条)が、その具体的な損害額を立証しなくても、侵害者による複製物の数量や利益の額などから推定することができるとされています。(著作権法114条)

不当利得返還請求

また、侵害された著作物によって侵害者が利益を受けている場合は、その利益について返還するよう請求することができます。(民法703条、704条)
返還しなければならない額は、著作権侵害をしていることを知らなかった場合は「その利益が残っている範囲」で、知っていた場合は「利益すべてに利息を追加した額」とされています。

例えば他人の小説を無断で書籍化して販売して1000万円の利益があったが社内整備のため600万円をすでに使っていた場合、権利侵害を知らなかった場合は残っている利益400万円を返還しなければならず、権利侵害を知っていた場合は1000万円プラス利息分を返還しなければなりません。

名誉回復等の措置請求

最後に、著作者または実演家は、故意または過失がある侵害者に対して、名誉や声望を回復するための措置を請求することができます。(著作権法115条、116条)
新聞に謝罪広告を掲載する、などが該当します。

刑事上の対抗措置

民事だけではなく、権利者が告訴すること(親告罪)で犯罪として罰則が科せられる場合があります。

著作権、出版権、著作隣接権の侵害

著作権、出版権、著作隣接権の侵害の場合、罰則は原則として「10年以下の懲役」または「1000万円以下の罰金」となります。
しかも、どちらか一方ではなく懲役と罰金を両方とも科すこともできます

それだけではありません。
侵害者が法人の場合には、罰則がずっと強化され、「3億円以下の罰金」となります。
注意が必要なのは、この罰金刑は法人に対してのもので、その法人の従業員で著作権法違反行為を行った個人に対しては前述の刑罰が科せられるということです。
処罰される対象が法人に変わるのでは無く、違反行為を行った個人に対する罰則は変わらず(著作権法124条1項)、法人が訴えられた場合には従業員である違反者個人も訴えられたことになります。(著作権法124条3項)

また、判例に依れば、侵害者が本来の権利者が誰なのかということを具体的に認識している必要はなく、単に「(他に真の)権利者が存在する」という認識をしていれば処罰できるとされています。
「知らない誰かが作った著作物だけど、まあいいや、利用してしまおう!」では処罰される可能性があるということになります。

なお、上記著作権侵害は親告罪であるため、著作権者からの告訴がない限り裁判にはかけられません(著作権法123条1項)。
ただし例外として、有償の著作物を原作のまま複製されたものを公衆に譲渡し、または原作のまま公衆送信する(公衆送信するために複製する場合も含む)場合、いわゆる”海賊版”の製作・販売に対しては非親告罪となり(著作権法123条2項)、著作権者からの申出などがなくても、警察などの捜査機関の捜査と刑事裁判にかけることができます。

その他の侵害

前項の罰則だけではなく、以下のような行為についても罰則が定められています。
他にもいろいろ定められていますが、主なものを抜粋します。

行為 罰則(個人) 罰則(法人) 親告罪
著作者人格権または実演家人格権の侵害 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科可) 500万円以下の罰金
営利目的でダビング機を設置、公衆に提供 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科可) 500万円以下の罰金
無断複製物などを頒布目的で輸入 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科可) 3億円以下の罰金
権利侵害により作成された物を事情を知りつつ頒布や所持、輸出 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科可) 3億円以下の罰金
プログラムの違法複製物(海賊版コピーなど)を業務使用 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科可) 3億円以下の罰金
著作者や実演家の死後に人格権の侵害 500万円以下の罰金 500万円以下の罰金 ×
コピーガードを解除する機械やプログラムの製造、頒布、所持、輸入、ネットへの掲載 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科可) 300万円以下の罰金 ×
個人利用目的でも、販売または有料配信されている著作物が著作権侵害の販売・配信であることを知りながらダウンロード等すること(違法サイトからのダウンロード) 2年以下の懲役または200万円以下の罰金(併科可)
著作者名を偽って著作物を頒布 1年以下の懲役または100万円以下の罰金(併科可) 100万円以下の罰金 ×

軽く考えず、しっかりと検討しましょう

著作権は、特許や商標と異なり、誰でも著作権者となることができる、とても身近な権利です。
それだけに、著作権について軽く考えてしまい、権利を侵害してしまっているケースも少なくないと思います。
悪質な権利侵害の場合はとても大きな代償となりますので、特にビジネスにおいて著作物を利用する際は、専門家と相談して正しく権利処理することをお勧めします。

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