Web制作関係者も注意!ホームページ制作と著作権

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個人でも会社でも、いまやホームページを持つことが当たり前となりましたが、ホームページを構成する要素の多くには著作権が関係してきます。

発注側だけではなく、ホームページ制作会社やフリーランスなど受注側の立場からも、ホームページに関連する著作権について考えてみましょう。

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お金を払った側が著作権者になる、という誤解

とにかく多いのが、この「お金を払った側(発注者側)が著作権を持つ」という考えではないでしょうか。

例えば物の売買であれば、お金の支払いという行為の対価としてその物を手に入れる(所有権を持つ)ことができますので、著作権についても同じような考えをしてしまう、というのもわかります。

ですが、著作権というものは著作者が持つもので、譲渡契約が交わされて初めて他人に権利が移動します。
お金を払ったからといって、当然に著作権を持つというのは間違いです。

契約書に著作権を譲渡するという条文が無かったり、利用を許諾するという条文が無かったり、あるいは契約書の取り交わしそのものが無かったような場合は、著作権は著作者が保有したままになります。

ホームページ制作における著作物

著作権は当然には移動しない、ということは理解いただけたと思いますが、それではそもそもホームページ制作に関係する著作物には、どのようなものがあるでしょうか。

単に「ホームページ」と言っても、それを構成する要素はたくさんあります。
掲載している文章や写真だけでなく、イラスト、業種や会社に依っては動画や音楽などもあると思います。

基本的にはここで挙げたものは著作物である可能性が高いですが、問題となるのはその著作物の著作権者は誰なのか?ということになります。

受託制作の場合、原稿や写真は発注者側から提供される場合が多いため、それらの著作権者は発注者と考えるのが一般的です。
ただし、その原稿や写真が著作物ではない場合、または他に権利者がいる場合には、発注者は著作権者とはなりません。
著作物ではない場合とは、例えば

  • 短いキャッチコピー
  • 他人の著作物をパクったもの
  • その他、創作性の無いもの

などが挙げられます。

他に権利者がいる場合とは、例えば

  • Googleなど検索エンジンの画像検索で見つけた写真
  • 他社が提供する地図
  • ストックフォト

などです。

これらのものは取扱には注意しなければなりません。
パクリはダメですし、他に権利者がいるものの場合はしっかりと権利処理(許諾をもらう等)を行います。

ウェブデザインは著作物なのか?

06/04追記:
この記事では著作物性が否定される可能性を前面に出した内容となっていますが、これは著作物だと断定する表現を避け、また否定される可能性の注意喚起のためでした。ウェブデザインの著作物性については別の記事に書きましたので、合わせてご参照ください。

ホームページ制作会社やフリーランスなどの受注側としては、作成したホームページデザインについて著作権を主張したいと考えると思います。

ですが、ウェブデザインが著作物といえるのかは正直難しいところです。

ウェブデザインが著作物であるかどうかについて、法文でも明記されていませんし、また直接的な裁判例も無いため断定はできないのですが、下記のような判例から考えると、ウェブデザインについても著作物性が認められない可能性は十分高いと考えられます。

【注意】著作物かどうかは最終的には裁判所の判断となります。一律にウェブデザインは著作物ではない、ということではありません。

サイボウズ事件(東京地裁平成14年9月5日判決)
ビジネスソフトウェアのレイアウトは同種のソフトであればどうしても似通ってしまう”ありふれた表現”であるとされた(※著作物だとは断定していないが否定もしていない)

著作権侵害差止等請求事件(大阪地裁平成24年1月12日判決)
販促品のデザイン、レイアウトについて、受託制作として発注者から提供された素材を基にデザインするということは発注者の指示に従って制作しなければならず、デザイン制作者はレイアウトなどの処理をしただけであり創作性が認められず、著作物性も否定された

 

見やすさや操作性を考えるとウェブデザインはある程度似てしまうことは十分想定されますので、デザイナーが著作権を主張するのは難しいと感じています。

そもそもウェブデザインとはイラストや写真、ロゴ、原稿など複数の著作物を、配色やレイアウトを検討して見やすく配置しただけのもの、という見方もできるため、著作物の定義である「思想または感情を創作的に表現した」とは言えない可能性が高いです。

クライアントからの素材に頼らず、誰が見ても創作的だと感じるデザインであれば著作物性が認められると思いますが、受託制作においてこのようなケースは考えにくいのではないでしょうか・・・。

 

ただ、逆に言えば、ウェブデザインの著作物性が否定された判例はありませんので、契約条項などでも「私が作成したサイトデザインは著作物だ!」と言い張ることはできます。
何らかのトラブルが発生し、ホームページデザインについて発注者との間で裁判になった際に裁判所が著作物性を判断しますので、それまでの間は著作物として扱うことは可能です。

05/22追記:編集著作物なのか?

その後様々なサイトを見ていると、ホームページは編集著作物(著作権法第12条)であると謳っているサイトも多数確認できました。
確かに、著作物を選択または配列して創作性を有するものは編集著作物です。
また、東京地判平成8年9月27日の判決文において、編集著作物における創作性について次のような判断がなされています。

(略)編集著作物における創作性とは,従前見られないような選択又は配列の方法を採るといった高度の創作性を意味するものではなく,素材の選択又は配列に何らかの形で人間の創作活動の成果が顕れていることをもって足りると解すべきであり(略)

このことから、特別高度な創作性を有さなくても、もっと普通に、複数の著作物を選択または配列するという”ウェブデザイン”には編集著作物としての著作物性が認められるような印象を受けます。

ただ、これが受託制作である場合、著作物の選択または配列には発注者の意向もかなり反映されますし、場合によっては選択も配列も指示される場合もありますので、一概にデザイナーが編集したとも言えない気がします。

著作権を主張するのであれば、編集著作物ではなく、美術の著作物のほうが適しているのでは?と個人的には思いますが、それはそれで認定のハードルは低くないため、イラストや文章といった個々の著作物に対してではなく”ホームページの著作権”という点では、権利主張は難しいのではという印象です。

ストックフォト素材やOSSを使うなら契約書にも気をつけよう

先述の通り、ホームページ制作においては発注者も受注者も著作権者ではない著作物を使用するケースというのも存在します。
具体的には、上記と重複しますが

  • Googleなど検索エンジンの画像検索で見つけた写真
  • 他社が提供する地図
  • ストックフォト
  • 音楽、動画などのフリー素材

などのほかに、忘れてはならないのが

  • WordPress、EC-CUBEなどのオープンソースソフトウェア(OSS)

が挙げられます。

昨今では納品物にWordPressなどのGPLライセンスのソフトウェアが含まれていたり、ストックフォトを利用する場合も多いですよね。

こういったものは発注者でも受注者でもない第三者が著作権者ですから、利用についてはしっかりと契約を結んだり、著作権者が提示するライセンス(使用許諾)を遵守する必要があります。

海外のサイトや個人のサイトで配付されている素材に多いのですが、ライセンスが不明な素材の利用には注意が必要です。
海外の方が作成した素材であっても、日本人が日本で利用する場合は日本の著作権法が適用されますので、ライセンス不明の素材を利用していたら、ある日突然著作権侵害だと言われてしまう可能性も否定できません。

ちなみに、契約書のテンプレートを利用しているような会社がよくやるミスですが、上記のような著作物を利用しているのに「納品物のすべての著作権を(発注者)に譲渡する」というような条文を入れていることがあります。
WordPressやストックフォトなどの著作権者は受注者ではありませんから、当然権利譲渡はできません
このような間違った契約書を作成しないように注意しましょう。

まとめ:契約は大切です

発注者と受注者における著作権の問題については、多くの場合契約を交わすことでトラブルを防止できます。

重要なのは、著作権を譲渡するかしないか、著作者人格権の行使を限定するのか行使しないのか、といった点を当事者双方で合意し契約書に明記しておくことです。

著作権を譲渡する場合

発注者側にとっては、これが最も問題の少ない内容となります。
イラストや文章などを受注者側が制作した場合、その著作物について発注者側が著作権を保有することになりますので、自ら利用することはもちろん、他社に対して利用の許諾をすることもできるようになります。
また、受注者側は著作権者ではなくなりますので、例えば同じイラストや文章を他社に対して納品することができなくなります。

なお、すべての著作権を譲渡する場合でも、特に明記しない限り二次的著作物の創作と利用についての権利(著作権法第27条および第28条)は含まれないこととなりますので、著作権譲渡の契約書を作成する際は留意する必要があります。

著作権を譲渡しない場合

著作権を譲渡しない場合(=イラストや文章などを作成した受注者が著作権者のままである場合)は、著作物の利用範囲を決めて許諾を得るという方法があります。
著作物の利用方法と、各権利の及ぶ範囲をよく検討し、的確な利用範囲を定めて契約書に明記します。

著作者人格権の扱い

たとえ著作権を譲渡したとしても著作者人格権は譲渡できませんので、著作者人格権は行使しないとするか、行使する場合の具体的な制限(例えば「改変の際は著作権者に許諾を得る」)などを決めておくことが大切です。

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