年賀状への使用から考える写真の著作権

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出典: Pixabay

もうすぐ年賀状の時期となりますが、特にお子さんのいる家庭を中心に、写真スタジオで立派な衣装を着て撮影された写真を年賀状に利用したい、と考えている方は多いと思います。

実際、そういったニーズに応えるため、撮影した写真を使って年賀状を作成するサービスを提供している写真スタジオもあります。
しかし、予算の都合や”自作”に拘るために、そういったサービスを利用せず自分で年賀状を作成したいと思っている方も少なくないと思います。

では、写真スタジオで撮影し購入した写真をスキャンしたり、待受画像用として提供されている画像データをダウンロードしてそれを年賀状に利用することは、著作権法から考えるとどうなのでしょうか?

3行でまとめると

  • 写真は著作物であり、たとえ購入した写真であっても権利譲渡契約が無い限りその著作権は写真スタジオが持ったまま
  • そのため、許諾なく利用することは原則として違法である可能性が高い
  • しかし、実際には黙認されるケースがほとんど

写真は著作物

大原則として忘れてはならないのが、撮影された写真は多くの場合著作物であり、その著作権は写真を撮影したものに帰属するという点です。決して”被写体となった人”が著作権者ではありません。
つまり、写真スタジオで撮影したのであれば、その写真スタジオが著作権者(※)となります。

(※)正確に言えば、撮影者が写真スタジオの社員であれば「職務著作」(著作権法第15条)の規定により一般的には著作権者は写真スタジオとなります。社員ではない、契約しているカメラマンが撮ったような場合は、契約内容により一般的にはカメラマンまたは写真スタジオとなります。

購入しても著作権までは譲渡されない

よくある誤解として、「写真を購入したのだから、その写真は自由に使って良い」という考えがあります。

確かに、L判やアルバム、最近はキーホルダーなど形・大きさは様々ありますが、商品として購入した写真そのもの、つまり”物体としての写真”(法律では「有体物」といいます)は購入者が自由に扱うことができます。
部屋に飾っても良いですし、田舎のおじいちゃん・おばあちゃんに送るのも自由ですし、気に入らない写真なら処分することも自由です。
これは、「購入」によって写真が印刷された有体物の「所有権」を得ているためです。

しかし、著作権は違います。(※譲渡権は除く。下記参照)

写真の購入とは、あくまで商品としての有体物を得ただけであって、特約のない限り著作権を得たのではありません。譲渡に関する契約を交わさない限り、著作権は譲渡されません。

ただし、譲渡権については、適法に譲渡された著作物の場合は1回で消えてしまいます(著作権法第26条の2第2項第4号)ので、1回目の譲渡、つまり”写真の購入”により譲渡権は消えるため、購入したアルバムなどを他人に譲ったり売ったりすることは問題ありません。【譲渡権の消尽】

よって、商品を購入した後であっても、その商品に印刷されている写真の著作権というのは、その写真を撮影した写真スタジオが保有したままとなっていますから、写真を複製するためには著作権者(写真スタジオ)の許諾が必要となります。

ネットで検索していると、こちらのように完全に間違った回答がベストアンサーに選ばれてしまっている例もあります。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14149522414
ベストアンサー以外の回答でも「自分や家族の写真だから大丈夫」のような回答がありますが、この質問者は著作権について聞いているので、写っている人は関係ありません。
肖像権やパブリシティー権と著作権は違いますのでご注意ください。

著作権の制限規定は適用できるか

このように、撮影された写真の著作権は写真スタジオが保有しているため、その利用には原則として許諾が必要となるのですが、例外として、許諾なく使える場合があります。

それは「著作権の制限規定」に該当する場合です。

これは著作権者の権利の一部を制限するもので、その規定は複数ありますが、今回特に関係してくるのが「私的使用のための複製(著作権法第30条)」という規定です。
これにより、”私的使用”のためであれば、著作権者の許諾なくコピー(複製、焼き増し)することができます。

私的使用の範囲内であれば他社で焼き増ししても良いと明示している写真スタジオもありますね。

年賀状に使うのは私的使用?

では、そもそも年賀状に使うことは、私的使用の範囲内でしょうか?

プライベートな友人に送る年賀状は商用ではありませんので、感覚的には”私的”な使用だと感じられます。

しかし、私的使用とは「個人または家庭内などそれに準じた範囲内」というのが対象となるため、年賀状のように多数の他人に配布するようなものは該当しません

つまり、この制限規定は適用できないということになります。

スキャンは?待受画像は?データ納品の場合は?

スキャンするということはコピー(複製)するということですから、先述のとおり、許諾無く行うことは著作権を侵害する行為だと考えられます。
スキャナーという機械を使う場合だけではなく、商品写真を撮影することも複製となりますので要注意です。

サービスや商品として提供される待受画像や、写真スタジオによってはL判やアルバムなどの紙媒体ではなくUSBメモリなどに保存したJPEG画像などで納品されますが、そういったデジタルデータであっても同様です。
それを年賀状という別の媒体に印刷すれば、それは複製ということになります。

厳密に言えば違法状態だが・・・

このように、写真スタジオが撮影したものをスキャンしたり、待受画像として入手したものを無許諾で年賀状に利用することは著作権侵害である可能性が高いのですが、しかしそれで警告や告訴されるというケースはほぼありません

今回のような年賀状用の写真に限らず、著作権侵害は親告罪であるため、権利者である写真スタジオが権利行使(告訴や損害賠償請求)しない限り、利用者にとって影響はありません。

個人が年賀状に使うことで写真スタジオ側が被る損害というのは、一般的に考えて大きくないでしょうし、差し止めや損害賠償請求にかかる実費や人件費といったコストを考えると、黙認しても問題ないという判断は十分考えられます。
あるいは、違法行為が行われることを承知の上で、それでも撮影に来てもらった方が利益になるという考えもあるかもしれません。

しかし、無許諾であれば違法は違法です。
「問題ない」のではなく「厳密に言えば違法であるが黙認されることが多い」という意識を持つことが重要です。

写真によっては、ミッキーマウスをはじめとするディズニーのキャラクターやミッフィーなど、写真スタジオ以外の第三者が著作権を有している著作物と一緒に撮影することもありますが、これらの著作物の権利者は一般的に写真スタジオ以上に著作権に厳しいため、利用形態によっては黙っていないこともあり得ると思います。

問題無く年賀状に使いたいという場合は

これまでずっと「無許諾であれば」違法である、と書いてきました。
逆に言えば、許諾を得られれば問題無く年賀状に使うことができる、ということです。

そこで、まずは直接写真スタジオに交渉してみてはいかがでしょうか。大手では難しいかもしれませんが、小規模な写真館などであれば、快く許可してくれることもあるかもしれません。

あるいは、年賀状への利用OKを明示している写真スタジオもありますので、そういったスタジオを利用するのも良い選択です。
(例) たまひよの写真スタジオ

写真にもしっかり著作権があることを理解し、すてきな年賀状を作って受け取った人に楽しんでもらいたいですね。

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