報道目的ならSNS内の画像を無断利用しても良い?!

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出典: 足成

先日、大阪を中心とする大きな地震(大阪北部地震)がありましたが、被災者によって静止画や動画で撮影されTwitterなどのSNSに投稿された、災害時の状況写真・映像が数多く存在します。

こういった被災写真等について、テレビの報道局が写真投稿者に対して、一方的に「放送で使用します」と通知していることが話題になりました。

この行為に対して「勝手に利用するな!」「無断転載だ!」という反対意見も多数寄せられているようですので、この問題について著作権法を基に考えてみたいと思います。

放送に使用できるのは原則的には著作権者だけ

被災写真については、通常の写真と同様に、撮影した人が著作者となり、著作権が発生します。

そのため、放送で使用する(法23条:公衆送信権)といった、著作権法で定められている方法で利用できるのは、著作権を有する著作権者のみとなります。

「放送権」は、公衆送信権に包含される下位概念とされています(中山信弘『著作権法 第2版』p.257)

SNS投稿時点で権利譲渡しているケースは少ないと思いますので、著作権者=著作者=投稿者となっている場合がほとんどだと思います。
つまり、放送で使用するためには、著作権者である投稿者からの許諾が必要となるのが原則です。

時事の事件の報道のための利用

しかし、著作権法には、著作権者の権利行使を制限する「例外規定」(権利制限規定)があります。

その中の1つとして、法41条として「時事の事件の報道のための利用」という、やたら「の」が多い見出しが付いている条文があります。

(時事の事件の報道のための利用)
第四十一条 写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。

簡単に言うと、事件の報道において、以下の条件すべてに当てはまる場合は、著作権者の許諾無く無断で利用できる、ということになります。

  • (1)報道対象となっている事件を構成する、またはその事件の過程で見聞きされるもの
  • (2)報道の目的から考えて、正当な範囲内であること

白か黒か

”白”っぽいか?

今回問題となっているケースに当てはめて考えますと、

大阪北部地震での被災の状況を撮影した写真であるため、大阪北部地震を報道する場合においては、その写真は事件(=大阪北部地震)の過程で見られたものとして、(1)の要件を満たすと考えることができます。

また、現時点では事件報道のためだけに使用されており、その写真自体を批評したりするような扱いでも無いと思いますので、おそらく正当な範囲内で利用されているのだと推測され、(2)の要件も満たすと考えることができます。

このことから、たとえ無断であったり事後承諾の形であっても、法41条の規定により著作権者の許諾無しで利用することができた、つまり「」(適法)であるという意見があります。

”黒”っぽい考え方も

しかし、その一方で、本当に「正当な範囲内」なのか、という疑問も否定できません。
それは、地震という災害の報道において、ユーザーがSNS投稿した写真を利用することが必要不可欠ではないためです。

例えば、とある団体に関するニュース報道において、その団体が作成したビデオを放送局が無断放映した事件に関する裁判(「TBS事件」平成5年3月23日大阪地裁判決)で、裁判所はこの無断放映を法41条に基づき適法と判断しています。

これは、そのビデオが報道対象となっている事件を構成するものであったこと(しかも報道内容に繋がる重要なシーン)、そして単にビデオテープの外観を放映しても視聴者には全く伝わらないので、その中身(記録されている映像)を放映することは報道の意味を明らかにするためにも大きな意味がある、つまり正当な範囲での利用であった、との判断に基づくものです。

では、今回の災害の報道においてはどうなのかということを考えますと、被災状況を伝えるためには、ユーザー投稿写真が必ず必要というわけではなく、テレビ局スタッフが現地に赴き撮影した写真や映像を利用することも可能です。
先述のビデオとは異なり、他のもの(写真)を使って報道することは可能ですので、ユーザー写真を使うことが報道の意味を明らかにするために大きな意味がある、とまでは言えないと考えることもできます。

つまり、ユーザー写真を無断利用しなくても”被災状況”というのは報道できるはずですので、このようなタダ乗り無断利用は「」(違法)だという意見もあります。

もちろん、大変な状況なのに被災者宅に上がり込んで撮影なんてできない、あるいは写真使用許諾を得ることなんてできない、という意見もあります。

実際に白か黒かは裁判所が判断することですので、ここでは断定的なことは言えません。

正直なところ、判断が微妙で難しいところだと思います。

あくまで印象としては、「報道の自由」と「著作権者の権利」の衝突となる事案ですが、放送で無断利用されたとしても、そもそも利益を得るための写真ではなく、またSNSを利用して自らの意思で公表している写真であるため、著作権者の権利を不当に害しているとも言えないと考えられ、どちらかと言うと「白」の方に近いグレーなのでは?と感じています。

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