メールや手紙を勝手に拡散するとマズイ?!

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自分宛に届いたメールや手紙。

感動する内容だからみんなに紹介したい。
あるいは、問い合わせに対する返信で、この企業のこの対応は許せないから拡散してやろう。

・・・など、いろいろな思いや考えがあると思いますが、もらった手紙やメール内容の一部を、ブログで紹介したり、FacebookやTwitterなどのSNSにアップしたり、あるいは雑誌や書籍に掲載することは自由にできるのでしょうか?

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3行でまとめると

  • メールや手紙は著作物とみなされることも多い(※著作物とはみなされない場合も多いので要注意)
  • 引用の要件を満たさず、無断利用は権利侵害の可能性大
  • メールや手紙の差出人から利用許可をもらうことが原則

著作物であることが多い

著作権法で保護されるのは著作物ですので、まずはメールや手紙が著作物なのかという点が重要になります。

著作物の定義については過去の記事(著作物とは?)を参照いただきたいのですが、一般的には、メールなどを書いた人が自身の「思想または感情を創作的に表現」しているものと思いますので、著作物に該当するケースのほうが多いのでは無いかと考えられます。

ただ、もちろん、すべてのメールや手紙が著作物だと認められるわけではなく、著作物の定義に該当しないようなもの、例えば

○○様

お世話になっております。△△株式会社の□□です。
明日の会議についてですが、開始時刻を午後3時に変更していただけますでしょうか。
よろしくお願い致します。

このようなメールは、この内容であれば誰が書いてもほぼ同じものとなり、まったく”創作的に表現”されたものではありませんので、著作物だとはみなされないことになります。

※なお、弁護士に対する懲戒請求書を著作物と認めた例について当ブログの別記事に記しています。このように、著作権で保護される著作物は芸術的な作品には限られません。
保護対象は芸術作品だけではない?改めて考える著作物の範囲

所有権と著作権は別のもの

著作物だとされるメールや手紙であれば、そのメールなどを書いた人が著作者であり、通常は著作権者となりますので、その利用には著作権者の許諾が必要ということが大原則となります。

ですが、特に手紙であれば便箋などの紙という物体が自分の手元、目の前にあることで、自分の所有物であるという意識が働きやすくなります。
そのため、つい自由に扱うことができるという感覚になってしまいがちですが、所有権と著作権はまったく別の権利ですので、取り扱いには注意が必要です。

「引用」もできない

ブログやSNSにアップするためには、メールなどの差出人である著作権者の許諾が必要だとしても、著作権法にはその著作権者の権利を制限する規定があります。

その規定の一つ、「引用」(著作権法第32条)に該当するとして、著作権者の許諾が無くても、メールや手紙の一部であればブログやSNSにアップできるのでは?と思うかもしれません。

しかし、これは引用の重要な要件を見落としています。

それは、引用ができるのは公表されている著作物に限られるという点です。

例えば、宣伝のために多数の者に送付するダイレクトメールのようなものであれば、公表されているといえる余地もありますが、一般的な手紙やメールであれば受取人に対してのみ送信していますので、公表されているとはいえません。
よって、引用だと主張することは難しいです。

複数の著作権侵害となる恐れ

このように、引用だとして無断利用することは困難ですので、著作権者の許諾なくブログに書いたりSNSで拡散することは著作権侵害となる可能性が高いです。

特に、メールや手紙という媒体からブログやSNSなどに転記することによって「複製権」と「公衆送信権」という財産権の侵害となるだけでなく、ブログなどに掲載するということは勝手に公開したことになりますので、著作者が有する著作者人格権の一つである「公表権」の侵害ともなります。

著作者人格権については、こちらの記事もご参照ください。
著作者の権利(1):著作者人格権

とあるテレビ番組で、薬物事件に絡んであるアーティストの未発表の曲を無断で流して非難を浴びたということがありましたが、たとえ時事の報道のためであっても、未発表の曲を無断で番組中に流すことは公表権の侵害となります。

なお、著作権法第41条において、「事件を構成し、または事件の過程で見聞きされる著作物は、報道の目的上正当な範囲において事件の報道に利用できる」とされており、これだけを見ると先述のテレビ番組は問題が無いようにも感じられますが、第50条において「著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない」とわざわざ規定されていますので、未発表の曲を無断で利用することはできません。

特定の企業や団体などを糾弾するため、メールでのやりとりをブログやSNSに掲載しているケースもありますが、それが先方に無断で行っているような場合は、この公表権侵害として逆に不利となることも考えられますので、メールや手紙を利用する場合は十分に留意し、差出人などの著作権者から許諾をもらうようにしてください。

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