著作物利用でトラブルにならないために知っておくべき3つのキホン

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このブログを執筆しているビーンズ行政書士事務所では、電話やメールで著作権に関するご相談をお受けしておりますが、最も多くいただく質問が

「○○のために△△を使うのですが、違法ですか?」

というものです。

違法か否かを判断するのは最終的には裁判所となりますので、私からは確定的に「違法です」「合法です」ということは申し上げられませんが、通常は著作権法の規定から懸念点などをお伝えしています。

ただ、違法性があるのか無いのかという点については、以下の各ポイントを知っておくだけで、ある程度はご自身で判断できますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

なお、利用するものがそもそも著作物ではない場合は、著作権で保護されませんので著作権法違反となることはありませんが、その著作物か否かという判断は難しい場合も多いため、ここでは挙げておりません。
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ポイント1:権利制限規定に該当する?

著作権法では、権利者の許諾なく利用できるというケースが定められており、これらは権利者の権利を制限するため「権利制限規定」と呼ばれます。
この権利制限規定に該当する利用方法であれば、著作権者から許可を得ること無く、いわば”勝手に”利用することができます。

条文では著作権法第30条から50条(第5款 著作権の制限)まで多くの規定があるのですが、代表的なものをいくつかピックアップします。

権利制限規定について詳しくは「著作物を無断で使用できる場合(1)」「著作物を無断で使用できる場合(2)」もご覧ください。

1. 私的使用のための複製

おそらく多くの人が無意識のうちに利用しているのが、この規定ではないかと思います。
テレビ番組をレコーダーに録画したり、友だちに見せるために雑誌の1ページをコピー(写メも含む)したり、好きな俳優やアーティストなどの写真をスマホも待ち受け画像にしたり、、、といったケースが該当します。

このように、適用できるシーンはとても多いのですが、多いが故に知らず知らずのうちに適法である境界線を越えてしまっているという場合も少なくないようです。

条文では「個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」を目的とするときは「使用する者」が「複製」ができる、とされていますが、重要なのは太字の箇所です。

この条文が適用できない場合というのをいくつか挙げてみると、次のようなものがあります。

  • ビジネス用途ではダメ(会社員個人が自分の仕事のために行う場合でもダメです。)
  • 個人的または家庭内といった限られた範囲を超えてはダメ(例えば年賀状に使う場合など。過去のこちらの記事もご参照ください「年賀状への使用から考える写真の著作権 」)
  • 個人的使用のための複製であっても、使用する人以外の人が複製を行ってはダメ(いわゆる”自炊代行業者”が違法と判断されたのも、これが理由。)
  • 複製とそれに伴う改変、翻案のみが許され、その他の利用(SNSに投稿する、複製したものをオークションに出品する、など)はダメ

これらは「私的使用」のように感じられますが、この制限規定は適用できませんので注意が必要です。

2. 引用

以前パクリ記事が大きな問題となりましたが、他人の記事の一部を自身の記事内に掲載するという場合は、この引用の要件を満たせば合法的に行うことができます。
(参照「パクリ問題から考えるネットメディアライターのための「引用」のキホン 」)

この事件以降、「無断引用禁止」と書かれた記事やブログも見受けられますが、要件さえ満たせば引用は無断でできますので、その点は注意が必要です。

3. 教育機関における複製

学校などの教育機関において授業に使う目的である場合、著作者の権利を不当に害さない場合に限り、教師や生徒は公表された著作物を複製することができます。

なお、教育機関とは「営利を目的として設置されているものを除く」と明記されていますので、学習塾や音楽教室などは該当しません。

ただし、営利目的である株式会社が運営する学校や、専修学校、職業訓練所などには適用があります。

4. 営利を目的としない上演など

非営利目的で、観客などから料金を徴収せず、さらに出演者にも報酬を支払わない場合は、著作物の上演、演奏、上映、口述ができます。

よく例として挙げられるのは、学園祭などにおいて上演(演劇など)や演奏(バンドなど)を行う場合ですが、注意が必要なのは、先述のとおり許可されているのは「上演、演奏、上映、口述」のみですので、例えばバンド演奏をビデオ撮影してブログにアップすることは「公衆送信」であるため、原則的には権利者に無断で行うことはできません。

原則的に無断での公衆送信はできませんが、バンド演奏などで音楽の著作物を利用する場合、YouTubeやニコニコ動画などJASRACが包括契約しているサービスであればアップすることは可能です。

ポイント2:権利者が予め許可をしているか?

著作物によっては、権利者が特定の条件において予め利用を許可しているものもあります。

クリエイティブコモンズやオープンソースソフトウェアのライセンスが代表的なものです。

このブログも、ページ最下部をご覧頂くとわかる通り、「クリエイティブ・コモンズの 表示 – 非営利 – 改変禁止 4.0 国際 ライセンス」で提供しており、この条件を守れば記事を転載することができます。

GPLやMIT、BSDといったオープンソースソフトウェア(OSS)のライセンスも、そのライセンス条項に従うことを条件にソフトウェアやライブラリといったプログラムの著作物を無償で利用・改変することができます。

また、NHKクリエイティブ・ライブラリーのように、多くの動画を創作用素材として利用できるサービスもあります。

なお、こういったライセンスやサービスを利用する場合、そのライセンス内容や利用規約に同意し、遵守する必要があります。

ポイント3:許可をもらう

2つのポイントを紹介しましたが、実際には当事務所にいただくお問い合わせは、これらのポイントに該当しないものが多いです。

ではどうするのか?と言うと、「権利者から利用許可をもらう」しかありません。
当たり前のことのように感じられるかもしれませんが、その当たり前がとても重要です。

著作権に関するトラブルは、無断で勝手に利用したことから生じるケースは少なくありません。

自身の作品や表現、仕事などに必要な著作物であれば、それを創造した著作者や著作権者から利用の許諾をもらうことが何よりも重要で、そして確実です。

特に、特定の団体によって権利が集中管理されているものは、個別の権利者に連絡・交渉する必要がないため、とても利用しやすいです。
その代表的なものが音楽の著作物であり、日本音楽著作権協会(JASRAC)やネクストーンといった著作権管理団体に所定の利用料を支払うだけで済みます。

このように、権利者との交渉や対価の支払いによって正しく権利処理しておけば、後日トラブルになるというリスクは大幅に回避できます。

著作物によっては、権利者を見つけることが困難である場合もあります。そのような場合のために、著作権法では文化庁長官による裁定制度というものが規定されており、補償金を供託し申請することで著作物を利用することができます。

ビジネスにおいては、権利処理が不十分であったために生じた紛争はマイナスでしかありません。
社内でしっかりと遵法意識を共有し、正しく権利処理するよう徹底が必要です。

権利処理や裁定制度の利用により、正しく著作物を利用するように心がけたいですね。

なお、権利処理や裁定制度の利用についてお困りのときは、ぜひ弊事務所にご依頼ください。

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