著作権ビジネスの強い味方!?著作権の登録制度

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特許や商標、実用新案などの権利とは異なり、著作権は著作物が創作された時点で自動的に権利が発生します。
これを「無方式主義」といい、日本だけでなく、世界のほぼすべての国や地域において同様です。

その一方で、実は日本の著作権法(以下「法」といいます。)には、75条から78条の2において、著作権の登録についての規定があり、一定の手数料や登録免許税を支払って申請することにより、以下の情報を登録することができます。
・実名の登録(法75条)
・第一発行(公表)年月日の登録(法76条)
・創作年月日の登録(法76条の2)
・著作権の登録(法77条)
(法78条は登録手続き、法78条の2はプログラムの著作物の登録に関する特例、です。)

なお、著作隣接権も上記77条と78条を準用する(法104条)と規定されていますので、著作権だけでなく著作隣接権も同様に登録できます。

著作権は自動的に発生するのに、なぜ登録手続きが必要なのか?
それぞれの登録事項について、検討してみたいと思います。

(※)この記事内に記載されている手数料、登録免許税は2018年2月13日現在のものです。

実名の登録

著作者名を付さなかったり、ペンネーム、ハンドルネーム、源氏名など、本名ではない名義で発表した著作物について、その著作者の実名を登録する制度です。

なぜこのような登録が必要なのかと言うと、これは著作権の保護期間と関係があります。

通常、著作権の保護期間は【著作者の死後50年】(法51条2項)とされていますが、先述のような本名ではない名義であったり、あるいは名義を付さないで発表した著作物(これを「無名又は変名の著作物」といいます。)は、著作物の【公表後50年】(法52条1項)とされています。

死後または公表後50年とは、記事執筆時点のものです。TPPなどにより保護期間が延びる場合があります。また保護期間の詳細は「著作権の保護期間」もご参照ください。

つまり、例えば小説家Aさんが2005年の20歳のときに小説を書いて、同時にそれを本名で公表した場合は、創作したときからAさんの死後50年を経過するまでの間保護されますが、Aさんがこの小説を誰も知らないペンネームで公表した場合、20歳の公表時から50年、つまりAさんが70歳の時点で著作権の保護期間が終了してしまいます。
これでは、70歳を超えたAさんは、自身の小説であっても権利を主張することができなくなります。

そこで、この実名の登録を行っていれば、たとえペンネームで公表したものであっても、実名で公表した場合と同様に著作者の死後50年間の保護期間が得られることになります。

ただ、この実名の登録には、いくつか留意点もあります。

まず、たとえペンネームなどで公表した著作物であっても、そのペンネームなどを使っている人の本名をみんなが知っているような場合は、そもそも保護期間はその著作者の死後50年までとされています(法52条2項1号)。
例えば、「藤子・F・不二雄」というペンネームで公表されているマンガであれば、その作者の本名は「藤本 弘」さんだということは周知の事実ですので、実名を登録しなくても藤本さんの死後50年を経過するまで著作権で保護されています。

また、先ほどの例のように著名人でなくても、公表されてから50年経過するまでの間に、著作者が実名を表示し直して改めて公表することで、同様に著作者の死後50年まで保護されます。

よって、この実名の登録が効果的となるのは、保護期間を延長したいが実名で再公表するのが難しい場合であったり、すでに作者が亡くなっているが遺言により指定された人が登録する場合が主なものとなります。

なお、この実名登録を行った場合は、官報にてその旨が公開されます。

【登録免許税など】
プログラムの著作物:1個につき手数料 47,100円 +登録免許税9,000円
プログラム以外:1個につき9,000円

第一発行(公表)年月日の登録

これは著作物が最初に発行または公表された日を登録するものです。
印刷されたものを概ね50部以上配布した場合などは「発行」、上映・演奏・上演・公衆送信などにより概ね50人以上に見せたり聞かせたりした場合は「公表」となります。

この登録を行うことにより、第一発行(公表)日として登録された日に最初に発行(公表)されたものであると推定されることになります。

なお、この登録には、確かにその日に発行または公表されたということを第三者が証明する書類の添付が必要となりますので、登録を検討している場合は、この証明者も確保しておく必要があります。

注意点としては、この第一発行(公表)に限らず、著作権の登録には発行または公表されていることが必要となりますので、未発表の著作物の創作日を登録するものではないということが挙げられます。

プログラムの著作物であれば、次の「創作年月日の登録」により未発表プログラムも登録できますが、それ以外の著作物の創作日を証明できるようにしたいということであれば、その著作物を記した書類を公証役場に持参し、その書類に公証人から「確定日付」をつけてもらうという方法もあります。
この方法によれば、厳密には著作物の創作日であるかどうかは疑念の余地もありますが、少なくともその著作物を記した書類がその日に存在していたことは公的に証明できますので、著作権侵害の争いにおいてどちらの著作物が先に誕生していたのかという点について有効な証拠となる可能性はあります。

【登録免許税など】
プログラムの著作物:1件につき手数料 47,100円 +登録免許税3,000円
プログラム以外:1件につき3,000円
(参考)
確定日付の付与:1件につき700円

創作年月日の登録

これはプログラムの著作物だけに認められているもので、公表していてもしていなくても関係なく、プログラムの創作日(完成した日)を登録することができます。

なお、創作年月日を登録できるのは、創作から6ヶ月以内に限られていますのでご注意ください。

また、バージョンアップなどによりソースコードが変更された場合は、それは二次的著作物であり登録されている著作物とは別のものとなります。

【登録免許税など】
プログラムの著作物:1件につき手数料 47,100円 +登録免許税3,000円

著作権の登録

いくつかある著作権登録手続きの中で、おそらく最も多く利用されているもので、著作権が移動した場合(譲渡や、譲渡担保)や、著作権を目的とした質権が設定された場合に登録できます。

これにより、著作権が誰に移動(譲渡)したのか、また誰が質権を設定したのかなどが証明できることになるのですが、この登録の最大のメリットが「第三者に対抗できる」ことになります。

これは、二重譲渡、つまり元の著作権者から複数人に著作権が譲渡されたような場合に非常に重要となります。

不動産の売買において、買主がその不動産の所有権を得たことを登記しますが、それと同様の考え方となります。不動産売買では、登記が第三者への対抗要件となり(民法177条)、購入の先後にかかわらず、先に登記を行った者が所有権を得ることになります。

例えば、著作権登録をせず、著作権者AからB社に著作権を譲渡した場合であっても、この譲渡に関して第三者であるC社には関係がありませんので、AからC社への著作権譲渡契約も有効となります。
この場合、仮にC社が著作権登録したときは、B社はC社に対して対抗することができず、C社は著作権者としてB社に権利を主張することができます。B社の方が先にAとの間で譲渡契約を締結していても、これでは自身が著作権者となるはずだったB社にとっては大きな損失です。

この場合、B社はAに対して損害賠償請求は可能であると考えられますが、C社から著作権を取り戻せるかは不明確です。

このように、主に譲渡契約の譲受側を保護するために有効な手段となります。
仮に、権利譲渡を受けたB社がすぐに著作権登録していれば、例えその後にAがC社に権利譲渡した場合であってもB社はC社に対抗できます。第三者に対抗できるかどうかは、著作権譲渡契約が早いか遅いかではなく、著作権登録の順番で決まります。

他者から著作権を譲り受けてビジネスを行うような場合は、この著作権登録は十分に検討する価値があるかと思います。

【登録免許税など】※著作権譲渡の登録の場合
プログラムの著作物:1件につき手数料 47,100円 +登録免許税18,000円
プログラム以外:1件につき18,000円

登録先は文化庁またはSOFTICのみ

以上、登録の種類を説明してきましたが、これらの登録先(申請先)となるのは、プログラムの著作物は「一般財団法人ソフトウェア情報センター」(SOFTIC)、それ以外の著作物は「文化庁となります。
(下記の著作権等登録原簿の交付または閲覧請求の宛先も同様です。)

文化庁やSOFTIC以外の団体などが著作権登録できますと謳っているような場合もあるようですが、これらの団体に登録しても、著作権法で規定されている著作権の登録とは全く関係無く、法的な効力には疑問がありますので十分にご注意ください。

登録内容は誰でも閲覧可能

著作権登録された内容は、著作権等登録原簿に記載されますが、文化庁またはSOFTICに対して一定の手数料を支払うことにより、誰でもその内容の交付または閲覧を請求できます。

登録事項記載書類の例

なお、請求には登録番号および登録年月日の指定が必要となりますので、それが不明である場合は、プログラム以外であれば文化庁の「著作権等登録状況検索システム」で検索できます。プログラムの場合は、SOFTICに問い合わせることになります。

また、先述の通り、実名の登録の場合には官報にも記載されます。

【手数料】
プログラムの著作物:1通 2,400円
プログラム以外:(交付)1通 1,600円 / (閲覧)1件 1,050円

著作権者であることを保証するものではない

名目としては「著作権の登録」ですが、この登録を行ったからと言って、それで登録者が著作者または著作権者であることが保証されるものではありません。

著作権とは、著作物の創作時に自動的に発生する権利であるため、いつ、誰が創作したものであるかを明確に証明することが難しく、登録申請があったからと言っても、その登録者が本当に著作者または著作権者であるかどうかは分かりません。

他人が作成した著作物を、偽って自分のものだとして登録手続きを行う者がいるかもしれません。
第一公表年月日についても、登録にはその年月日を証明する書類の提出が必要ですが、証人と登録者が共謀して虚偽の日付を登録するかもしれません。
このような場合であっても、これらが虚偽であることを確認することは非常に困難です。

そのため、例えば第一公表年月日については、法76条2項において

第一発行年月日の登録又は第一公表年月日の登録がされている著作物については、これらの登録に係る年月日において最初の発行又は最初の公表があつたものと推定する。

と定められているとおり、登録した年月日に公表されたと定めるのではなく、あくまで”推定する”ということになっています。つまり、基本的にはそのようであると扱いますが、それを覆す証拠があれば、この推定も否定されることになります。

この推定を覆すには、登録されていない側が立証責任を負うことになります。例えば、ある著作物に対してEさんとFさんのどちらが著作者なのかが争われている場合、Eさんが実名の登録を行っていたときは、Fさんはそれを覆す証拠を提出しなければなりません。(Eさんは、基本的には自分が著作者だという証拠を出さなくても良いことになります。)

また、著作権の登録であって、著作物の登録では無いため、実際の登録手続きにおいて申請書やそれに関連する添付書類の提出は必要となりますが、登録の対象となる著作物自体は提出しません。
よって、登録されたものが著作物であるかどうかも確認は行われませんし、真の著作者(著作権者)であることも確認されませんので、登録されたからといって著作物であり著作者(著作権者)と認められた訳ではないことにもご留意ください。

安全な取引のために

著作権は自動的に発生するものであるため、原則として登録は必要ありません。

しかし、先述の二重譲渡への対策や、著作者や著作物公表日の推定など、特にビジネスにおける取引の安全確保や裁判での立証の容易性などのために登録制度を利用することは有益であると考えられます。

弊事務所では著作権登録の代理申請なども承っていますので、もし有効性を感じたのであれば、ぜひお問い合わせください。

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