自作曲の使用中止を申し入れることはできるのか?

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アメリカ大統領選に関し、候補者の一人が集会などの際に有名アーティストの曲を使用していたことについて、そのアーティストから使用中止の要請があったようです。
これについて、候補者側は使用する権利を買っており、使用することについては問題が無いという考えから、要請には応じないようです。

これはアメリカでの話ですが、では日本において同様のケースが生じた場合はどのようになるのでしょうか?

イベントなどで音楽を使用するには

選挙の集会に限らず、イベントでも店舗でも、既成の音楽を流すには権利者の許諾が必要です。
これは著作権法第22条に定められている「演奏権」に依るもので、公衆に直接聞かせることを目的として演奏する権利は著作者が専有するとされています。

「演奏」には、楽器を演奏するだけではなく、CDを再生することも含まれます。

音楽の場合、メジャーレーベルから発売される曲の多くについて、作詞・作曲者の権利は日本音楽著作権協会(JASRAC)に譲渡されていますので、通常はJASRACが演奏権を専有する権利者となっています。

もちろん例外もありますので、常にJASRACが権利者とは限りません。実際に使用する際は権利者が誰なのかを確認してください。

よって、集会で既成曲を利用したい場合は、原則的にはJASRACに所定の利用料を支払うことで利用することができます。
これは、利用料を支払うことで権利者(=JASRAC)から利用の許諾を得たことになりますので、演奏権については適切に権利処理されたということになります。

著作者人格権には要注意

先述のように、演奏権については、原則的にはJASRACなどの権利者から許諾を得ることで適法に音楽を利用することができます。

ただし、気を付けなければならないのは著作者人格権です。

著作者人格権は他人に譲渡できない権利であるため、JASRACでは管理していません。
つまり、JASRACに利用料を支払ったとしても、著作者人格権についてはまったく関係がありません

よって、著作者人格権についても留意する必要があるのですが、法文上、著作者人格権として定められているのは「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」ですので、集会で使用するには問題が無いように感じられます。

  • 購入したCDなのだから、すでに公表されている曲である → 公表権○
  • BGMで利用するには大きく問題にはならないし、アナウンスで一言だれの曲か言えばいいだろう → 氏名表示権○
  • CDをそのまま流すのだから、改変はない → 同一性保持権○

よって、一見何も問題が無いように思えますが、実は著作者人格権には重大な留意点があります。

”みなし侵害”

著作権法第113条第6項には、

著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。

という規定があり、著作者の名誉又は声望を害する方法での利用は侵害とみなす、とされています。

単に曲を使用しただけで名誉または声望を害するのか、と思うかもしれませんが、曲を使用するシーンに依っては、著作者の人格的利益が害される可能性があります。

例えば、

  • 熱心な阪神ファンで有名なアーティストの曲を、巨人軍選手の応援で使用する
  • 凶悪事件を紹介する番組でその事件を紹介するBGMとして使用する

といったケースが考えられます。
このように、特定のイメージに結びつくような利用については、著作者によっては自身の人格的利益が侵害されたと判断される場合があります

CMでの利用や宗教に関するもの、そしてこの記事のテーマである選挙集会に関しても、特定の商品や思想などに結びつきやすい利用であるため、著作者の許諾がない場合は権利侵害だとみなされる可能性が高いと言えます。

裁判においても、ある有名企業が、ある有名アーティストの有名な曲をCMに使おうとした際、そのアーティストから許諾を得ていなかったために公開中止の申し入れがされたことにより、完成していたCMの放送目前になって中止となってしまい、損害を被った有名企業が提訴し、このアーティストの曲を管理していた音楽出版社が1億円以上の損害賠償を命じられたものがあります。(平成14年11月21日 東京地裁判決)

既成曲をCMに使う場合に事前に著作者(作曲者)の許諾を得るというのは、この裁判前から普通に行われていたことであり、いわば”常識”であったために、その作業を怠った被告の音楽出版社の過失は大きいと言えます。

また、音楽に限らず、有名漫画家が描いた似顔絵イラストを、被告が、自身が立案した特定の思想に基づく企画への投稿であるかのように装ってインターネットに公開した行為についても、この113条6項に基づき著作者人格権を害したとみなされ損害賠償が命じられた裁判例もあります。(平成25年7月16日 東京地裁判決)

このように、既成曲を候補者の集会に利用するという行為は、その曲が候補者のイメージに結びつきやすく、またその曲の作曲家やアーティストが候補者を応援しているようなイメージも与えかねないため、曲を利用する際には必ず著作者の許諾を得るようにしてください

また、自身の曲の利用方法について不満のある方は、利用者に対して利用中止を申し入れてみても良いかと思います。

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