ロゴマークが似ていると著作権侵害となるのか?!

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出典: P.D.(Pixabayより)

著作権関連で最近大きく話題となっているのが、2020年東京オリンピックのエンブレム問題。
ベルギーにある劇場のロゴマークに類似しているとして、そのロゴのデザイナーから著作権侵害だと指摘されて、ネットもマスコミも似てる・似てないの大論争(?!)となっています。

そんな中、知財を専門とされる弁護士やその他専門家の多くは「問題無い」という認識を表明しています。
また、IOCをはじめとする関係機関も同様に問題無いという見解のようです。

多くの人が「似ているのでは?」と指摘しているのに、なぜ問題ないのか?
ロゴマークの類似について、著作権法では一般的にどのように扱われるのかを考えてみようと思います。

【注意】当記事で取り上げるのはロゴマーク類似による一般的な著作権侵害についてです。オリンピックエンブレム固有の問題や、商標その他知的財産権を検証したものではありません。
またマナーやモラルといった著作権法とは直接の関係のない概念も考慮しておりません。

そもそも似てる?似てない?

冒頭で挙げたオリンピックエンブレムと劇場ロゴマークについて、あくまで私見ですが、「似ている」とは思います。
双方とも「T」をモチーフとして使用しており、シンプルな表現方法をとっていますので、ある程度似てくるのは避けられないと考えられます。
また、TOKYO 2020という文字(フォント)も同じように見えます。もしかしたら同じフォントなのかもしれません。

でも、このようなロゴマークの類似について、著作権法では「著作権を侵害している」とは判断されない可能性があります。

著作物性が否定される可能性(1)

著作権侵害とならない大きな理由が、著作物性の否定です。

ロゴマークに関する裁判例がいくつかあり、それらを総合して考えると、一般的には「ロゴマークは著作権では保護されない」とされています。

その大きな理由が、ロゴマークには著作物性が否定されている、つまり著作権法で保護される著作物ではない、とされることが多いためです。

有名な裁判例として「Asahiロゴマーク事件」(東京高裁平成8年1月23日判決)がありますが、この裁判において

  • 文字は万人共有の文化的財産ともいうべきもの
  • 文字は本来的には情報伝達という実用的機能を有するものである
  • つまり文字の字体を基礎とするデザイン書体に創作性を認めることは困難

このような理由から、文字主体のロゴマークに創作性を認めず、それによって著作物の定義である「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)には該当しないことから、著作権では保護されないものと判断されています。

また、別の裁判(「ゴナ書体事件」最高裁平成12年9月7日判決)においても、書体の著作物性について「従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり,かつ,それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならないと解するのが相当である」とし、書体の著作物性を否定しています。

著作物性が否定される可能性(2)

では、「このロゴは書体ではなく、もっとデザインされた”美術の著作物”というべきものだ!」という主張はどうでしょうか?

「美術の著作物」とは、著作権法10条で著作物の例示として挙げられている「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」のことですが、この美術の著作物に該当すれば著作権法で保護される著作物だということになります。

この点について、一般的には美術の著作物は「純粋美術」と「応用美術」に分類されるとされ、純粋美術とは絵画作品のような「鑑賞を目的とし、実用性を有しないもの」であり、応用美術とは「それ自体が実用品であったり、実用品と結合されたもの」とされており、美術工芸品や、家具に施された彫刻などが該当します。

なお、著作権法では2条2項で「美術の著作物には美術工芸品を含むものとする」とされています。

では、仮にこのロゴマークが美術の著作物だとした場合、ロゴマークは鑑賞目的に作成されるのではなく実用目的に作成されることから、応用美術に該当するものだと考えられます。
その場合、この応用美術に著作物性が認められるかどうかが問題となりますが、最近の裁判例(「シャトー勝沼広告事件」知財高裁平成25年12月27日)でも

(略)実用に供され,あるいは,産業上利用される応用美術の範ちゅうに属するというべきものであるところ,応用美術であることから当然に著作物性が否定されるものではないが,応用美術に著作物性を認めるためには,客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性があり,純粋美術と同視し得る程度のものでなければならないと解するのが相当である。(略)

と判断されており、応用美術に著作物性が認められるためには純粋美術と同等程度の”見る者の審美的要素に働きかける創作性”が必要だとされています。

こういった点を考慮すると、一般的にはロゴマークに著作物性を認めるには相当ハードルが高いことが分かります。

裁判では「依拠」が証明できるのか

著作権侵害とならないもう一つの理由が、依拠して制作されたことを証明するのが難しい点です。

仮にロゴマークが著作物だと主張した場合、類似ロゴについて著作権侵害だとするためには、ロゴを真似た、パクった、つまり「依拠」して制作されたロゴであることを証明しなければなりません。

誰もが知っているような著名なロゴマークであれば「見たことあるだろ!」という主張もできそうですが、そうではないロゴの場合、相手方がロゴマークを「知っていて」「真似した」ことを立証するのはなかなか難しいのではないでしょうか。

もちろん、意図して真似たデザインを作成した場合は著作権侵害だとされる可能性は十分あります。

商標や意匠で保護するのがベター

このように、ロゴマークの類似について著作権法で戦うことはなかなか難しいのが現状です。

では類似ロゴについては法的な対応は何もできないのか?というと、そんなことはありません。
著作権では難しいですが、同じ知的財産権の中でも「産業財産権」と呼ばれる商標権、意匠権によって保護することができます。

大切なロゴマークは、他人に侵害される前に、しっかりと商標登録や意匠登録をしておきたいものですね。

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