著作権の保護期間

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著作権を保護する期間は無限ではない

著作権や著作隣接権など、著作権法で定められている権利には「保護期間」が定められています。
この保護期間の間は、著作権法によって著作物や著作者の権利が守られる、ということになりますが、逆に言うと、この保護期間を経過すれば権利が保護されなくなる、ということです。

保護期間が過ぎたものはパブリックドメインとして共有財産になり、自由に使うことができるようになります。

これは、著作権者などの権利を守ることを重視する一方で、ある程度の時間が経過した著作物についてはその権利を消滅させることにより、社会全体で自由に使うことができる「共有財産」とすることで、そこからまた新しい著作物が生まれてくることを期待しているものです。

著作者人格権の保護期間

著作者人格権は「一身専属」の権利とされています。(著作権法59条)
つまり、著作者の死亡(法人の場合は解散)によって権利が消滅し、他人への譲渡や相続はできません。

保護期間:著作物が創作されたときから著作者が生存している間

※著作者の死亡により著作者人格権は消滅しますが、消滅後であっても、著作者の意を害さないと認められる場合を除き、仮に著作者が生存していた場合に著作者人格権の侵害となる行為は行ってはならないとされています。

財産権としての著作権の保護期間

著作権の保護期間は、原則、著作物を創作したときから著作者の死後70年間です。(著作権法51条2項)
ただしいくつか例外があります。

【無名、変名の著作物】(著作権法52条)

公表後70年(死後70年が明らかであればその時点まで)
無名や匿名、本名以外の変名で公表されている著作物は、著作者がわかりませんので死後70年と言われても誰の死後なのかが不明のため計算ができません。
そのため公表されてから70年という規定になっています。
なお、変名であっても、本名が明らかである場合には、著作者の死後70年とされます。

【団体名義の著作物】(著作権法53条)

公表後70年(創作後70年以内に公表されなかったときは創作後70年)
著作物が法人など団体の名義である場合には、誰の死後70年なのかがはっきりしませんので、公表後70年とされています。
ちなみに、実際の著作者が個人であっても法人であっても、著作者名が団体名義であればこの規定が適用されます。

【映画の著作物】(著作権法54条)

公表後70年
創作後70年以内に公表されなかったときは創作後70年

実演家人格権の保護期間

著作隣接権の中の実演家人格権については、著作者人格権と同様に「一身専属」の権利とされています。(著作権法101条の2)
よって、実演家の死亡より権利が消滅します。
なお、これも著作者人格権と同様に、実演家の死亡後であっても実演家人格権を害するような行為は行ってはならないとされています。

著作隣接権(財産権)の保護期間

著作隣接権の保護期間は次のようになります。(著作権法101条)
・実演家:実演後70年
・レコード製作者:レコード発行後70年(※レコードの音を最初に録音(固定)してから70年間発行されなかったときは、その録音後から70年)
・放送、有線放送:放送または有線放送後50年

旧法での保護期間と新法との関係

旧法とは昭和45年(1970年)12月31日までの著作権法のことですが、この旧法によって演奏歌唱とレコードは著作権保護されており、保護期間は著作者の死後30年とされていました。

ですが、現行著作権法(新法)では、演奏歌唱とレコードは著作権ではなく著作隣接権として扱われます。
これにより、旧法下での実演または製作レコードについて、旧法での保護期間と新法での保護期間とで差異が生じてしまいますので、旧法での保護期間が新法の保護期間より長い場合は、旧法による保護期間が適用されるという規定になっています。(著作権法附則15条2項)

ただし、この旧法での保護期間が新法の施行日から70年後よりも長くなる場合は、新法施行後70年(=2040年12月31日)が限度とされています。

(例)
【歌手Aさん(1985年死亡)が1940年に歌った曲の場合】
・新法での保護期間:実演後70年→2010年12月31日まで
・旧法での保護期間:死後30年 →2015年12月31日まで
・新法施行後70年: 2040年12月31日まで
→旧法の保護期間のほうが長く、それが新法施行後70年を超えないため、保護期間は旧法に合わせて2015年12月31日までとなる

【歌手Bさん(2011年死亡)が1955年に歌った曲の場合】
・新法での保護期間:実演後70年→2025年12月31日まで
・旧法での保護期間:死後30年 →2041年12月31日まで
・新法施行後70年: 2040年12月31日まで
→旧法の保護期間の方が長いが、新法施行後70年を超えるため、保護期間は新法施行後70年の2040年12月31日までとなる

保護期間の計算方法

死後70年や公表後70年といっても、死亡した日や公表した日から70年後、というわけではありません。
著作権の保護期間についての計算の場合、死亡や公表、創作は、それらが発生した年の翌年1月1日が開始日となります。

例えば、2015年6月20日に亡くなった著作者の場合、期間の開始が2016年1月1日となりますので、死後70年とは2085年12月31日までの期間ということになります。

戦時加算

保護期間の計算は上記が原則となりますが、1つ大きな例外があります。それが「戦時加算」と呼ばれるものです。

これは、第二次世界大戦における連合国および連合国民が有する著作権で、日本とその連合国との間で平和条約が発効した日以前にその連合国民が有していた著作権については、上記の保護期間の他に、一定の期間を加えるというものです。(連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律)

【1941年12月7日(太平洋戦争開戦日の前日)までに有していた著作権】
1941年12月8日から、日本とその連合国との間の平和条約が発効する日の前日までの日数が加算されます。
例えば、アメリカやイギリス、フランス、オーストラリアなど(※1)の場合は3,794日(10年4か月10日)が加算されます。
※1:平和条約の発効は1952年4月28日

【1941年12月8日から平和条約が発効する日までに取得した著作権】
著作権を取得した日から、日本とその連合国との間の平和条約が発効する日の前日までの日数が加算されます。
例えば、アメリカ人の著作者が1946年5月10日に取得した著作権については、2,180日(5年11か月18日)追加となります。

※2019/12/05更新: 改正著作権法施行(平成30年12月30日)に伴い、保護期間を変更しました

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